text-XWリレー小説
□第十章
【SIDE:V】
「W、入るぞ」
返事は、ない。
当たり前か。先ほどあれだけ「煽った」のだ。ケーキでつられる年でもないだろう。トロンも分かっているくせにこういう嫌味なことをさせる。
「紅茶でも飲まないか。ケーキもある」
目の前の扉は開く気配がない。
生憎、トレーで手は塞がっている。足で開けるといった、はしたない真似も出来ない。
世間一般では「美男子」に分類される次男。
あいつにキャーキャー言いながらサインを求める婦女子たちも、まさかここまで女々しいやつだとは思わないだろう。
……まあ、あいつの泣き顔は嫌いではない。
ただし、私の組み敷く限りだ。
別の男の下で生理的な涙を浮かべるWは、考えるだけでも反吐がでる。
「……何してるんですか、V兄様」
三男の溜息交じりの声が、私を現実に引き戻した。
「Wに紅茶を持ってきたが、拒まれている」
「何やらかしたんですか……そんな難しい顔をして」
そんなに険しい顔だっただろうか。ふぅと長く息を吐けば、少し力が抜けたようだった。
「まったく。鍵、かかってませんよ。兄様?入りますよ」
何も知らないVは、止める間もなく扉を押し開けた。
私のせいではないからな。
とりあえず心の中で言い訳をした私は、そっとWのいる部屋へ足を踏み入れた。
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