text-XWリレー小説
□第七章
【SIDE:W】
Xが部屋を後にしてからも、俺の怒りは収まらなかった。
激情に燃える炎が、俺の瞳を溶かしている様な気分がする。
蝋が溶け出す様に、瞳から熱い雫が頬に落ちて行った。
(たかが男に抱かれたくらいで....だと!?)
悔しさから表情が歪む。
激しい怒りが胸に溢れて行った。
(テメェは何も知らねぇ癖に!!)
行き場のない感情が脳の中を駆け巡る。
持て余した感情のままに、俺はベットのシーツに指を掛けた。
ぎゅうと指先に力を入れてすがれば、白いシーツにぐしゃりと影が走る。
「兄貴....っ」
Xは俺の事を、復讐の為の駒だとしか思っていないのだろうか。
彼奴にとって、家族はあの日、父さんが異世界に消えてから....皆いなくなってしまったとでも言うのか。
(トロンも、Xも、俺の事を見ていない)
だからこそ、Xはあんなに酷い事を言うのだろう。
兄である彼奴が、俺の練習相手になろうだなんて、到底笑えない。
俺の事をまともに気遣ってくれるのはV位だ。
(クソ、それでも....俺は)
それでも俺は、父の事も、兄の事も、弟の事も、皆大切だった。
彼奴らが俺を、たとえ愛していなくても。
それでも棄てられない。
だから苦しい。
(....."あの人"は、今何処にいるんだろうな)
不意に、俺は静かに心中で呟いた。
俺の初めての人。
(ファン?恋人....?一体....)
いくら考えても答えは出ない。
不自然に記憶が不鮮明だった。
(恋人....)
俺にそんなものがいたとは到底思えないが。
恋人でもなければ自分が身体を赦す訳もないだろう。
それに、あの人はとても俺を愛してくれたし、俺もあの人を愛している。
....けれど恋人なら、何故あれから一度も俺に会いに来てはくれないのか。
「俺が、汚れてるから」
俺は自身の問に対し、自ら小さく答えを呟く。
呟いた瞬間、胸が抉られる様に痛んだ。
(それとも何だ....Xの言う様に、俺が....汚れてる癖に、未だに男に抱かれて泣いてるからか?)
瞳から涙がとめど無く溢れて行く。
そもそも、相手の顔を思い出せない時点で、俺はあの人に愛される資格などないのだろう。
これ程愛してるのに、記憶が無いなんて。
(会いたい....)
記憶の欠損の理由は何と無くだが予想がついた。
(クソ、返せよ....っ!!)
俺の記憶は、恐らくトロンに奪われたのだろう。
(ットロン....!!)
何故トロンは俺の最も幸せな記憶を奪ったのか。
あの記憶は、あの繋がりは、今の俺を支えている全てとも言える程なのに。
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