text-XWリレー小説

□第三章

俺は人形の様にただ静かに上阪の立ち去った方角を見つめた。
思考が薄く霧散していく。

嬲られた身体が痛んだ。
某然と霞む視界の中、横目に乱れた自身の髪が見える。

肉体だけがはっきりとした痛みを感じていて、意識は妙にぼんやりとしていた。

(―――大丈夫だ、初めてでもねぇんだから....)

俺は静かに心中でそう呟く。
瞬間、心臓がきゅうと痛んだ。

太股に再び男の白濁が伝い、俺は目を細める。
瞬間、ツッと頬に涙が伝った。

他人に犯されたのは初めてではない。
俺にデュエルで負けてトーナメントを敗退したデュエリストに襲われたり、あるいは地位のある人間を相手に職務的に抱かれなければならない事もあった。

俺に絶対の好意と服従を誓っているべきファンに犯されたのは、今回が初めてだが....

(....初めてじゃないんだ、こんなの....よくある事だ....)

必死でそう内心で呟くも、汚された身体が惨めに震えるのは押さえられなかった。
何度犯されても、行為に慣れる事はない。

俺にとって、交わりは苦痛でしかなかった。

(....けど、"初めて"だけは....そうでもなかったな....)

"初めて"を思い出せば蘇るのは紅茶の味で――――



そこまで思案し、俺はハッと現実に引き戻される。
俺は二三度瞬きして、掌に掴んだシーツが確かに自身のベットのものであると確認した。

(....あ....俺、また....)

あの時犯されながら....紅茶の事考えてた。

突然俺はそれに気付き、小さく息を吐く。

紅茶の事、ひいてはXの....兄貴の事。
俺は犯されながらも何故その事を考えていたのか。

(....いや、そんなん決まってる)

俺は目を細めてそっと枕を腕に抱いた。
男になぶられた下肢が、瞬間疼く。

「俺の"初めて"の人との、思い出だから....」

俺は小さく呟いた。
それから、頬が赤く染まるのを感じる。

(初めて、だけは....気持ち良かった)

気持ち良かった。
それだけは覚えている。

けれど、その相手が誰であったかは全く思い出せなかった。

(でも、キスは紅茶の味がした)

それは覚えている。

俺は瞬間意識が高揚するのを感じて、ぽすりと枕に顔を押し付けた。

今でも舌を溶かす様なあのキスを覚えている。
紅茶の香りが悩へ抜けていって、初めての行為に怯える俺の心を慰めてくれた。

(....あぁ、だから....あん時もXの紅茶の事思い出したんだな.....)

俺にとって"初めて"の時の事は唯一の救いで。
そしてまた、強烈に印象付けられた出来事でもある。
身体を繋げられる度、反射的に紅茶の事を思い出すのはそのせいかも知れない。

「....っ////」

何度身体を汚されても、
"初めて"はとても幸せだった記憶があるから....俺は今まで何とか耐えられた。

(誰だったんだろう....)

声も、顔も思い出せない人。
ただ、優しかった気はする。

俺の事を、とても愛してくれていて――――

俺は幸せで、いっぱい乱れて、初めてなのにイきまくった。

(なのに相手が思い出せない何て....そんなの有るのか....?)

名前も顔も思い出せない男に恋をしてるなんて、笑えねぇよ―――




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