text-XWリレー小説

□第二章

結論からすれば、上坂はナンバーズを保持していなかった。
「ファン」の手前その事実に舌打ちも出来ず、俺は終始不気味なほどの作り笑いを見せながらデュエルに臨んだ。

そうだな、デュエリストとしては中の上ってとこか?

初めからナンバーズ狙いでなければ、まあ悪くない勝負だったと思う。

上坂から向けられる熱く、甘い視線もデュエル後には1ファンのものとして好意的に捉えられた。

「ありがとう!W君」

やや汗ばんだ手をこちらへ向け、上坂は爽やかに笑う。
負けたというのに、この笑顔。マジで信じらんねぇ。

「いえ、こちらこそ。楽しかったですよ」

あくまで紳士的にその手をとる。

これで今日のデュエルも終わり。ちょっと気持ち悪ぃこいつともおさらば。2度と会うことも無いし、会ったとしてもその名も顔も忘れているだろう。

家に帰れば、きっと例のクソニートが文句を言ってくる。

「一体、いつになればナンバーズを持ってこれるんだい?」

などと愚痴っては、平然と溜息をつくに違いない。
相変わらずムカつく兄だ。

「嗚呼……W君、これで終わりだと思ったのかい?」

「なっ……?!」

うるせえ、と俺がそっぽを向くと、Vはようやく小言を止めて紅茶を淹れる。飲め、とも言われねぇけど、幼い頃から愛用してるカップは自然に差し出される。

「ふふっ……極東チャンピオンはやっぱりココも凄いのかな?」

「くっ……ふぁっ……な、や……め……」

俺は、無言でカップをとる。暇な時間に練習でもしたのか、Vの淹れる紅茶は悔しいがうまい。
ま、感想なんて1度も伝えたことねぇけど。
言ったところで、返ってくる高飛車なセリフは予想しうるからな。

「W君の泣き顔、すっごくいい……!」

「うるっ……さい……」

「ここ、見たい?ぐちょぐちょだよ」

「……っ!」

「W君、愛してるよ……ゴメンね、縛っちゃって。痛いよね?……あ、でもこれはこれで感じたりする?」

黙れ。

「ほら、もうタッた。ビクビクしてる……」

黙れ。

「はぁっ……W君のナカ、本当にいい!気持ち……いい!」

黙れ黙れ黙れだまれだまれダマレダマレぇえええええええ!

表手首に残る痣。
胸元や首筋に散る紅い華。
押し倒された衝撃で軋む背骨。
内腿に伝う白濁液。

(ありがとう!W君!)

満面の笑みで後処理をする男を、俺は呆然と見送った。

(ふふっ……これでもう、僕のこと一生忘れられないよね?)

耳触りな言葉が、俺の脳内をグチャグチャにしていく。

紅茶が……飲みたい。

あとは何も感ジナイ。



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