text-XWリレー小説

□第一章

【SIDE:W】


―――気持ち、悪い。

自室に帰るとすぐ、俺はベットに身体を投げ出した。
身体が熱い。

これは嫌悪感から来る熱だと内心で自身を言い含めるものの、胸の奥が甘く疼く様な感覚は、単なる嫌悪感とはとても言えそうにない。
自身の太股を這い回る男の掌の感触が、瞬間肌に蘇る。

「はぁ、クソ....あの男――――ッ!!」

俺はシーツをくしゃりと掴み、表情を歪めた。
頬が熱く熱を持つ。

脳裏を過るのは、今日の対戦相手の恍惚とした表情だった。

(ヘボデュエリストが....ッ、ヘボデュエリストの分際で....!!)

――――この俺を押し倒す何て。

俺は一人ベットのシーツを再び強く握り締めた。
男に身体をまさぐられた屈辱を思い出し、俺は頬を真っ赤に紅潮させる。

「クソッ.....ふざけんな....!!」



今日の対戦相手は俺のファンだという青年だった。
見た所23、4歳という所か。

人の良さそうな、無害そうな青年。

そんな人当たりのよさそうな好青年が、俺を目にした瞬間に顔色を変えた。

「W君!?もしかして君、極東エリアデュエルチャンピオンのW君じゃないのかい!?」

奴の興奮仕切った声は、今でもはっきり耳に残っている。

「はい、そうです....僕の事をご存知なのですか?」
「!!」

俺が故意に彼の前に姿を現した事は告げず、さも偶然ファンに遭遇したかの様に俺は振る舞った。
実際には何時も通り、俺のファンの中から、飛ばしたカードが選んだ者の所へ出向いたまでだったのだが。

それから、俺がにこりと笑って手を差し出すと、男は顔を輝かせて俺の手を両手で握り締めた。

「W君、あぁ....本物のW君かぁ....!!」
「んっ、そんなに強く握らないで下さい....少し痛いです....」

異常な位強く手を握られて、俺は一瞬背筋に冷たいものを覚える。

(チッ....随分と馴れ馴れしく俺に触りやがって....)

今までも対戦相手はファンの中から選んできた。
だからこそ、この様に興奮した対戦相手に熱い瞳で見つめられる事は度々あった。

確かに....ありはしたが。

「W君、僕の名前は上阪大(ウエサカマサル)だよ....さぁ、早速呼んでくれ」
「....上阪さん?」
「あぁ、何だいWくん!?」

ここまで妙な熱気を感じさせる男は始めてだった。
突然名前を呼ぶように要求されたのも始めてだ。

正直いくらファンサービスが俺のモットーでも、男にこんな視線を向けられれば気持ち悪いと感じてしまうのだが。

「その上阪さん....良ければ僕とデュエルしませんか?」
「えっ....W君とデュエル!?」

それでも俺は笑顔を崩さずにそう言った。
こんな男でも、ナンバーズを持っているかも知れないからだ。





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