TOTAL ECLIPSE ユウヤの双子の弟に転生しました
□第一章:朧月の衞士
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「「――サムライ?」」
「そう…礼儀正しく思いやりがあって慎ましい――日本古来の戦士。それが、あなたたちのパパはまさにサムライだったの。パパはね今も遠い国で皆のために戦っているのよ、ユウヤもユウキもパパのように強くて優しい立派な人になりなさい。」
「…ぼくも、サムライになれる?」
「もちろんよ、あなたたちにも日本人の血が流れているんだもの。」
「――じゃあ、ぼくもサムライになる!パパみたいなつよいサムライに!」
「ぼくも、ユウヤお兄ちゃんと一緒にサムライになる!」
「…し……しょ………………ユウキ少佐!!」
「……夢か(あの時は、まだ前世の記憶が戻る前で兄さんも日本の事や自分達に流れる血の事も嫌悪感なんて抱いてなかったし)」
「大丈夫ですか、物凄く魘されていましたよユウキ少佐。そろそろ国連太平洋方面第3軍・ユーコン基地に着きますよ?」
「ありがとう、イオン」
「本当に大丈夫なわけ?」
「あぁ大丈夫だよ、シンク。」
「隊長、あんまり無理しないで下さいよ。」
「そうだよ、アニスの言う通りだよ。隊長」
「あぁ分かってるよ、アニス、フローリアン。」
「……とりあえず、ユウキ少佐……お茶どうぞ」
「ありがとう、アリエッタ!!」
僕は、アリエッタから渡されたお茶を飲みながらシンクにもう一人の部下の事を聞いた。
「シンク、ルミはどうした?」
「ルミなら、眠ってるよ。」
「……そうか」
僕は、そう呟きこの世界の事を少し振り返ってみた。
一九五八年、無人探査機によって発見された火星地表に生息する数種の生命体は、科学者達を驚喜させると同時に、その雇用者達にも大いなる希望を与えた。
宇宙は死の荒野などではなく、地球生命は決して孤独ではない――その存在を知る人々の多くは、火星生命に対して同じく神の被創造物という宗教的な慈しみや同胞的な親近の念を自然に抱き、火星有人探査の夢に熱狂した。そしてその数年後、希望に浮かれていた人々は突然理解した。人類もまた、等しく生命の摂理に支配される存在に過ぎないのだというシンプルな現実を――。
一九六七年、ファーストコンタクトは惨劇となった。突如として月に現れた火星起源種は、恒久月面基地に所属する地質調査隊をひとり残らず食い殺した。以降彼等はその版図を思うがままに拡大し続け、軽武装のみで抵抗する人類を悉く退けた。この事を、サクロボスコ事件と呼ばれる。
人類に敵対的な異星起源種――国連呼称でBETA(Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of human race)と命名された生命体は、火星、月といった環境変化をものともしない強靭な生命力と圧倒的な物量によって、一九七三年には月をほぼ制圧、遂に地球――ユーラシア大陸中央部、新疆ウイグル自治区の喀什へ降下し後にオリジナルハイヴ(H1:甲1号目標)が建設される。
直接侵略を受けた中国は、優勢に推移する戦況を背景に国連軍の派遣を断った。だが、強力な生命発振レーザー器官を有する新種の出現によって航空兵器が完璧に無力化されると、物量に抗しきれず戦線は総崩れとなり、中央アジアは瞬く間にBETAの手に落ちた。
危機感に煽られた人類は、国連の下に各国軍の指令系統を再編し、反撃に打って出る。その後20数年間の戦いでユーラシアの95%を失ってしまったものの、航空兵力に代わる対BETA主力兵器・戦術歩行戦闘機の開発と配備、そして国際秘密計画――『オルタネイティヴ計画』によるBETA研究の成果によって、侵攻を停滞させる事に成功する。
一九九八年、国連軍総司令部はカムチャッカ、日本、台湾、フィリピンから、アフリカ、イギリスに至る防衛線によるユーラシア大陸へのBETA封じ込めを基本戦略として決定。その翌年、防衛線に打たれた楔――BETA占領下の神奈川以西の本州奪還を目的とする
明星作戦(オペレーション・ルシファー)を発動、2発の米国製新型爆弾の投下によって、BETA大戦史上初の失地回復を成し遂げ、敵の前線基地であるハイヴNo.22――通称横浜ハイヴの占領に成功した。
二週間前
僕は、自分の上司で国連欧州方面第七師団第15機甲連隊通称〔abyss〕の責任者ヴァン・グランツ中将の部屋にいた。
「ユウキ・ブリッジス少佐、参りました!」
「うむ、今日ユウキ君を呼んだのは他でもないEF‐2000を国連太平洋方面第3軍・ユーコン基地にて『プロミネンス計画』主に日本軍の不知火と一緒に強化改修するためにお前、ルミ、シンク、イオン、アリエッタ、アニス、フローリアン、七人でアラスカへ飛んでもらう。」
「僕らが、アラスカへ…!?」
この瞬間、物語の時が動き出した
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