‡story2

□雨宿り
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「………」

カチカチと時を刻む音に文字盤を見て
緊張で、吐きそうな気分になった

あと数十分で約束の時間になる…

じんわりと汗ばむのに冷えた手のひらをジーンズに擦り付けて深呼吸する

(この先の公園に…ラクスと…僕の、娘がいる…)

あの時の女性、ラクスと再会をして父親として償わせてもらえるようになったが
果たして自分は娘を愛せるのかと不安でもあった

そして、それ以上に娘…マリアもまた、父親としてなついてくれるのかという不安も…

しかし、今まで自分のせいで辛い思いをさせて来たのだから今からでも父親として精一杯頑張ろう
と軽く頬を叩いて気合いを入れ直す

ラクスからの指示で、一人で幼稚園に迎えに行ってから紹介すると言われ
指示された時間に公園で遊ぶ二人に声をかけろと言われている

「…そろそろ、行っても大丈夫かな…」

チラリと時計を確認して公園へと向かう

平日だというのに、公園にはたくさんの子供達がいた

「ママー、見て?ちょーちょ!」

「まぁ、本当ですわね…」

聞こえた声にドキリと胸が高鳴り、緊張がまた大きくなる

先程までとは違い、柔らかな笑みを浮かべて
お揃いの桜色の髪の少女と手を繋ぎ、花壇を眺めるラクス

あまりの美しさにときめく自分に反省していないのかと情けなく思いつつ、少女…娘、マリアに視線を向ける

「っ!」

マリアの顔を見た瞬間に愛せるのかという不安は吹き飛んだ

あの子は自分の娘だ!と一目で愛しさが溢れた

幼稚園の制服を着て、ヒラヒラと舞う蝶々に懸命に手を伸ばすマリアが愛しくて
本当に、生まれてきてくれて良かったと視界が滲み
慌てて頬を叩いて落ち着かせ、そっと歩み寄る

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