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□真夏の蜃気楼
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あれから土方はすっかり俺に寄り付かなくなった。
当然だ。友達だと思っていた男から突然告白されたのだから。
土方と友達ではなくなってしまったのは少し寂しい気もするが、元々自分が避けていたのだ。
向こうから避けてくれればこちらも逃げずに済む。

幸いもうすぐ夏休みも始まることだし、これを機に少し心を落ち着かせよう。
「何を言っている。貴様に休みなどないぞ」
「は?」
物思いに耽っていた俺の脳内に突然乱入してきたのは見ているこちらが暑苦しくなる程の長髪をおろした幼馴染の桂だった。
「銀時、お主中間試験の点数を忘れたのか」
「う゛…」
「おまけに最近授業までサボタージュしおって…補習を免れられるわけがなかろう」
「まぁ仲良く俺と補習受けようぜぇ」
「んなこと言ってお前ぜってー来ねぇだろ高杉!!」

こうしてギャーギャー騒いでいると少し気が紛れた。
この二人は小さい頃から同じ道場に通っていた幼馴染だ。何となく俺の気が落ち込んでいるのを察してくれたのだろう。
今だけは二人の存在に感謝した。

***

「暑ぃ…もうだめだ。やってらんねぇよ…」
あれからあっという間に時は過ぎ、俺は夏休みだというのに補習を受けに学校に来ていた。
「それが終わったら帰っていいから頑張りなさい。あぁプリントは職員室に提出しに来るように」
「へーい…」
他の補習仲間は皆各自のノルマを終え帰路についていた。
高杉はというと…サボりだ。少しでも期待した自分を殴ってやりたい。
「はーぁ、こうも暑いと頭も働かねぇっつうの!」
息抜きと題して俺は屋上に行くことにした。
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