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□真夏の蜃気楼
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「…っおい坂田!!」
逃げ出した、筈だった。
「そんな煮え切らない答えで俺が納得するとでも思ってんのか!!」
逃げ出したい。けど逃げ出せない。
どうやら俺は土方に捕まってしまったようだ。
そうしてようやく自分の腕が土方に捕まれていることに気付く。
「訳も分からず避けられるのは…辛いんだよ」
「……」
「なんとか言え」

――あぁ、もう…
この男はどうやっても自分を逃がしてはくれないらしい。
もし俺が本当のことを言ったとして、傷付くのはお前なのにな。

「…だから、お前のせいじゃないって言ってんじゃん…変なのは俺なんだよ」
「坂田…?」
「もう良いだろ?手ぇ離してくれ」
「良くねぇよ。お前どうしたんだ?」

なんでだよ。
なんでこんなにしつこいんだ。
そんなに追求するほどのことじゃないだろう?

「もう放っといてくれよ!!」
「さか…た?」
俺は土方に捕まれていた腕を無理矢理振り払った。
「辛いんだよ…お前の傍にいるのが…」
自分が情けなさ過ぎて泣きそうだ。
でも手を振り払われた土方はもっと情けない顔をしていて。
「…嫌われてたのか?俺は」
なんでお前がそんな傷付いたような顔するんだよ。
ただの友達だろう?
「そうだな…嫌いになれたら良かったのに」
「?」
土方にも聞こえないくらいの小さな声で呟いた。

「俺はな、どうかしちまったんだよ。お前見てると胸が苦しくなる。変だよな、俺ら男同士なのに」
訳が分からないといった顔で土方が俺を見つめてくる。

「ごめんな、土方。好きなんだ」


初めて吐露した自分の気持ちとは裏腹に、青すぎる空が輝いていた。
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