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□真夏の蜃気楼
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自覚してからは大変だった。
妙に土方を意識してしまい、いつものように飄々とした態度がとれない。
停学中だった幼馴染の高杉が戻ってきたこともあり、俺は自然と土方を避けるようになっていた。

そう、今日屋上で授業をサボっていたのも何かにつけて俺に話掛けてこようとする土方から逃れるためだ。
結局昼休みになるまで寝こけていたため、肝心の土方に見付かってしまったわけだが。

「お前飯は?」
「あー持ってきてない。購買行かねぇとなぁ」
「俺弁当2つあんだ。丁度良いから1つやるよ」
…やんわりと退路を断たれてしまった。
「てか何で弁当2つもあんだよおかしいだろ」
「今日部活のつもりで来てたからな。昼用と部活用だ」
何て偶然。俺は天を仰ぎたくなった。

二人並んで黙々と弁当を食べるという状況に俺は何とも言えない居心地の悪さを感じていた。
恐らく土方は決着をつけに来たのだろう。
いくらこいつがマヨオバケでも最近の俺がおかしいということには気付いていた筈だ。
最もその理由が何なのかまでは分らないだろうが。

「単刀直入に言うぞ。何で俺を避けるんだ」
はい来ましたー。
「…何のこと?」
「とぼけるな。お前あからさまに俺のこと避けてるだろう。気のせいとは言わせないぜ」
「…別に避けてるわけじゃねぇよ」
ただ、今までどんな顔してお前に接してきていたのか分らなくなっちまったんだ。
「…俺が何かしたのか?」
「ち…違う!」
いきなり声を荒げた俺に土方は少し驚いているようだった。
「違うんだ…土方…俺…」
そこで気付く。
言ってどうする?
土方を困らせるだけなのに?
「…悪い…何でもないんだ…お前のせいじゃないから…」
弁当ありがとな、とだけ言って一目散に屋上から逃げ出した。

後ろで自分を呼ぶ声を無視して。
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