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□逢坂関
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気が付いたらまた総悟の姿が見当たらなかった。
俺と一緒に巡回する日は必ずと言って良い程姿を眩ますあいつにイライラしながらも、毎度毎度自分が気付かない内に居なくなる辺り、自分の注意力が足りないのではないか…と少し心配になる。

ただ、最近の自分が注意力散漫なのには自覚があった。

原因はアイツ、万事屋なんて胡散臭い営みをしていて桂達攘夷志士とも繋がりのある女主人、坂田銀時だ。
ここ何日か妙に巡回中に見掛けるようになったアイツはいつも誰かに囲まれていて、俺には見せないような笑顔を振り撒いていた。
会えば喧嘩しかしない俺達だから、アイツのあんな顔を初めて見た時はしばらく目が離せなかったものだ。
普通にしてりゃそれなりじゃねぇかとふと思った自分に、ひどく困惑したのを覚えている。

それからと言うもの、あの銀髪を目にする度に何故か落ち着かない自分が居た。

考えてみりゃその理由は簡単過ぎるほどだった。

俺は坂田銀時に想いを寄せている。
何度も自分の中で否定しようとしたが、無駄だった。
もうどうしようもないほどに、俺はあの銀髪に心を奪われてしまっていたのだ。

理屈ではなかった。

***

そうこうしている内に探していた人物を見付けた。
しかしそいつは一人ではなかった。
何とあの銀時と団子を食べながら談笑していたのだ。
勤務中に何してんだなどと色々言いたいことはあるが、それよりも話の内容が気になってしまう。
相手に悟られないようじりじりと距離を詰めていくと、不意に少年が銀時の耳元で何かを囁いた。
───おい、総悟。ちょっと近過ぎじゃないのか。
若干のジェラシーを感じてしまった土方であったが、銀時がお茶を吹いた瞬間驚きの余り暫し固まってしまった。

───あんな顔は今まで見た事がない…
それは土方の前では勿論、歌舞伎町の人間にも見せないような顔だった。

耳まで赤く染まり慌てながら何かを弁明しているかのような銀時の素振りは、まるで恋バナに興じた街で見掛ける女達のそれだった。

今までその出で立ちや自分の事を俺などと言うサバサバした男らしい性格から色恋沙汰とは無縁だと勝手に思い込んでいたが、もしかしたらそれはとんだ思い違いだったのかもしれない。
頭の上にずっしりと重い岩を乗せられたような感覚に陥った土方はゆっくりと銀時達の方へ歩を進める。

それに気付いたのか何なのか、土方が辿り着く前に少年は人混みの中に消えてしまった。

「…あいつも中々のイケメンだな」
少年の後ろ姿を見遣りながら銀時がぽつりと呟く。
───まさかこいつ…総悟の事を…?!
そう思ったらまるで耳元に心臓があるのではないかと疑いたくなるほど心臓が鼓動する音が大きく聞こえた。

「おい万事屋」
気付くと俺は銀時に声を掛けていた。
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