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□first love
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「土方…終わりにしよう」


─────────────この恋を。


寒さも厳しくなった2月。
いつものように万事屋に来ていた土方に俺はそう言った。

「何を…だ」

本当は分かっているくせに。

「何をって…俺たちの関係を?」
「…っ、知ってたのか…?」
「あぁ、見合いの話?」

そりゃぁもう真撰組の副長が見合いともなればいくら箝口令を敷こうとも噂は流れるだろう。

勿論、俺の耳にも。

「銀時俺は…!」
「分かってる。」

分かってるよ。
お前が自ら望んだ訳じゃないって。
そしてそれが断れないことも─────。

「分かってるよ。俺は。」
「…っ」
──────だって仕方ないじゃないか。

土方は真撰組の副長で。
俺はただの一般市民。
おまけに同性ときた。
どう転んだってハッピーエンドとは程遠い。
これで、良いんだ。

「お前は悪くないよ」

優しいお前のことだ。
俺との関係を絶つだなんて、罪悪感を感じるなと言う方が無理だろうな。

だから。

俺が引導を渡してやる。
銀さんってばやさしー。

「…っ銀時!手前ぇはそれで良いのかよ!!」
「っ…」
「確かに手前ぇの言う通り、これは上から持ち掛けられた縁談だ。無下にすることは出来ねぇ。」
「…あぁ」
「けどよ、手前ぇはそれで良いのか?!」

────────良いわけあるかよ。

良いわけないに決まってる。
だけど──────


「良いに…決まってんだろ…」


───────嗚呼、
土方にも自分にも嘘をついて。
俺は何て滑稽なんだろう。

「…俺は嫌だ」
「土方…」

どうしてだろう。
いつもの土方が小さく見える。

「…止めてくれ」
「…?」
「俺を…失望させないでくれ…」

好きだよ、土方。

「お前の魂は真撰組だろう?俺は魂のブレないお前が好きだ。」

でも、駄目なんだ。

「俺の好きな、土方でいてくれよ…」

何て身勝手な願いだろう。
でも。
これは俺の最後の我儘だ。

「くそ…っ!」

土方は吸っていた煙草を揉み消し、顔を歪めた。

「んっ…!」

突然頭ごと顔を引き寄せられ、唇を強く貪られる。

「ふっ…ん…っ…はぁ…」

自分から別れを切り出したにも関わらず、離れがたく感じる。
…駄目だな、俺って。

「銀時…俺はお前が好きだ。愛してる。…今も、これからも。」

土方はそう言い放つと引き戸を開けて出ていった。


「…バカ土方…これじゃぁ」


───────忘れられないじゃないか。
銀時は徐に唇に手をあてた。




最後のキスは、煙草の味がした─────





end
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