短編集その1

□桜の姫君
1ページ/4ページ

そこは、パラレルワールドに存在する日本。
倭国と呼ばれている。
その国の中心部(この世界で言えば京都辺り)には、一年中美しい花々が咲き誇る、大層美しい里が在る。
花の里と呼ばれているその里には、パラレルワールドに咲き乱れる、あらゆる種類の花の花畑がある。
それを管理するのが、倭国の女神でもある桜の花の花姫である。
(但し、他の国にも花姫が居るので、他国の花姫の花の木々等は植えられていない)
花の里の住人達が住む場所と、桜の花の花姫が住む花の宮は、半時ほど歩くくらい離れた場所に位置する。
花姫が宿る桜の樹は、夜になるとやや紫がかった妖しい輝きを放つ。
それに魅せられた者は目が潰れるという、噂がある為である。
昼頃。
花の宮の奥の、桜模様で桜の飾りが付いた御簾の向こうでは、花姫とその夫が、謁見に来た人々の話相手を勤めていた。
花姫の髪型は、日本のお姫様と同じ、和風のお姫様髪型。
前髪を真ん中分けにし、前のほうの頬に近い髪が顎までの長さで耳に近い髪が胸まである。
艶やかな長い黒髪の後方の髪は、飾り紐の桜模様の紐で結わえ。
着物は、艶やかな色とりどりの十二単。
正座した足には、桜色の足袋。
細長い眉の下の、切れ長で金色の瞳の大きな目は睫毛が長く、唇は小さな花の蕾の如く。
鼻は低いが、大層な美貌である。
夫は、花姫程の美貌では無いが、黒い瞳の目は切れ長で、そこそこの美男。
長い金髪は、妻とお揃いの、桜模様の飾り紐で高く結わえ。
青い帯で結んだ桜模様の着物。
足袋は、妻とお揃いの桜色の足袋。
そこには、花の里の住民以外に、時の里・実りの里・獣人の里・龍の里・石の里・山びこの里・風の里・絵画の里等、様々な里から謁見者が来ていた。
一番遠い人魚の里からも、足を人間の足にする薬を飲んで、はるばる花の里へやって来る。
桜の花姫とその夫は、人々からの相談事等を聞いて、困り事等が有ればそれを四神達に伝え、願いが叶うように四神達との仲介役を勤めているのだ。
(但し、「お金が欲しい」とか「大きなお屋敷に住みたい」等の我が儘な願いは、叶えてもらえない)
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ