モブ生活始めました。
□松6に制裁を
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アッコちゃんのデビューライブ翌日、仕事を終えた私は、昨日散々お世話になったチビ太さんに会いに来た。
いつもどおり暖簾をくぐって、昨日の御詫びにと買ってきたお酒をチビ太さんに渡そうとして、私は絶句する。
『…え?え、ぇぇぇぇーーーっ!?ち、チビ太さん!?何があったの!?』
そこには、変わり果てたチビ太さんの姿があった。
『松6にやられた!?どういうこと!?』
チビ太さんはミイラ男かってくらい、身体中包帯だらけ。それでもお店を出すんだから、ほんと感服する。そんなチビ太さんを何?女と一緒にいたってだけでボコボコにするなんて!
昨日ファミレスで別れた後、赤パーカー松、グラサン松、神声松、スタバァ松に見つかったチビ太さんは、奴等に言いがかりをつけられてこの有り様に。
私の大切な友人に手を出すとは、いくらいーちゃんと十四松くんの兄弟だろうと神声松だろうと許さない!!
『チビ太さん!私、絶対チビ太さんの仇とりますから!』
そう言って屋台を飛び出し、いーちゃんのもとへ急ぐ。
路地裏には都合のいいことに、昨日の二人が待っていた。
『チビ太さんの屋台に松6全員8時に集合!私昨日と同じ顔していくから二人は知らないフリして、さりげなく他の松6をチビ太さんのところに誘って来て!』
は?と怪訝そうな顔をするいーちゃんと、無言で首を傾げる十四松くんに、私は黒い笑みを浮かべる。
『二人には悪いけど、私の友人に怪我をさせた罪、あの4人にしっかり償ってもらうから』
無言で冷や汗を流す二人に背を向け、私はスマホを開いてマンションへ走る。
『ーーー小宮ちゃん!昨日のメイク術、今すぐ教えてほしいんだけど!』
決戦まで、あと2時間ーーー。
■一松side■
嫌な予感はしていた。
昨日、十四松と家に帰れば、他の兄弟たちがチビ太に凛のことを問い詰め、ボコボコにしてきたと言ったから。
一瞬凛のことがバレたかと焦ったけど、チビ太は結局最後まで、凛のことは勿論、僕と十四松のことも話さなかったらしい。
……チビ太、チビ太、チビ太ぁぁぁぁぁ!マジか、どこまで男前なの。ていうかそれ、凛から見たら惚れるレベルじゃん。……逆に死ねぇぇぇぇ!!
だけどチビ太は完全な被害者だ。加害者がうちの兄弟だけど。……今度からおでん代くらい払おう。
チビ太に同情した僕が、小さな決意を決めた時、ふと凛の姿が浮かんだ。
………でもこれ、凛が知ったらどう思うだろう。
隣で十四松も同じことを思ったらしい。
お互い冷や汗を流す顔を合わせ、誓う。
………明日、また凛に会いに行こう、と。
ーーーその結果がこれだ。
完全に凛はキレている。僕と十四松は、ただ凛の言うとおり、他の兄弟たちをチビ太の所へ誘い出すしかないと悟ったーーー。
「え、えぇぇぇぇ!?どういうこと!?」
何気無く兄弟を屋台に向かわせた僕と十四松は、ただただ、ことのなり行きを見守るしかなかったーーー。
僕たちはいつもどおり、屋台の暖簾をくぐった。
そこには昨日と同じ姿の凛が、黒い笑顔とライオンのスタンドを携えて仁王立ちしていた。
……え、凛スタンド使いだったの?
凛の背後で今にも噛み殺しそうに唸ってるライオン。……怖。さすがに猫科でも凛のスタンドをなつかせる術など持ち合わせていない僕は、ちらりと他の兄弟を見る。
みんな目をかっぴらいて青ざめていた。トド松なんか白目むいて気絶している。…わからなくもない。
僕たちが唖然としている隙に、凛は僕と十四松以外の兄弟たちを縄で縛り上げていて、それにいち早く気付いたおそ松兄さんが冒頭の台詞を口にした。
「え、えぇぇぇぇ!?どういうこと!?」
おそ松兄さんの問いに、凛はどこから出したのか、両手にスタンガンをバチバチさせながら、恐ろしいほどの笑顔を見せた。
『私の大事な友人に手を出した事、謝罪して頂こうかしら?』
ガヴウ!!とスタンドのライオンが大きく吠える。
……死んだ。これ確実に死ぬパターンだ。
いつもなら僕も縛られたいんだけど、とかそのスタンガン僕に向けてほしいんだけどとか思うけど、今そんなこと言ってる余裕は全くない。
殺意を向けられてない僕がこんな状態なんだから、周りをスタンドのライオンが唾を垂らしながらウロウロされてるあいつらの精神状態はもっとヤバいはず。
「ちょ、待って!?なんで俺ら4人だけ!?」
『チビ太さんをこんな目に合わせたのは赤青緑ピンクって聞いたから』
「色扱い!?ちょ、ちょっと、おおおおおち落ち着きましょう!?ぼぼぼ僕たち、あなたのこと何も知らないですし!」
『どもるなコ"ラァ!?貴様兵長をなめてんのか!?もっと蔑んだ乱暴な話し方しろォォォォォ!!』
「いやなんで!?」
……一瞬あいつ願望が出たぞ。チョロ松兄さんも思わずツッコミいれてるし。
「お、落ち着けスィートデンジャラスガール!まずは是非俺たちに名前を…『名無しの権兵衛』…え、」
「名乗る気ないじゃん!」
『貴様らなどに名乗る名などないわ!』
「どういうキャラ!?」
『…あ、ごめんなさーい!紫くんと黄色くんはこっちでチビ太さんのおいしーいおでん食べててください〜。貴様らはまずチビ太さんに謝罪だコラァ!!』
「「「「扱いの差!!」」」」
駄目だこれ、もうこの場にいたくない。帰ってもいいよね。隣で冷や汗流しまくってる十四松も心配だし。
「…俺帰る。」
「う、うん!ぼくも!ごめん、兄さん!!」
"え〜帰っちゃうんですか〜?"なんて言う凛と、"おい裏切んな!一松!十四松!?"などと口にする兄弟に背を向け、僕と十四松は足早にそこから去った。
ーーー後であいつら4人に責められるのも覚悟で。
■その後の松6改め松4■
「「「「すみませんでしたぁぁぁぁぁ!!」」」」
『私にじゃない!チビ太さんに謝れコラァ!!』
「「「「チビ太ごめん!!」」」」
「…あー、うん、分かったからよ、そろそろり…ご、権兵衛もこいつらのこと許してやってくれよ」
『チビ太さんがそう言うなら……次、また私の友人に手ぇ出したらこの子のエサにするから』
「「「「二度としません!!」」」」
『よろしい』
(こ、こえぇぇぇ!チビ太の奴、いつの間にあんな最強セコム雇ったわけ!?)
(チビ太の友人はとんでもないデンジャラスガールだったな…)
(いくら可愛くてもあれはない!恐怖でケツ毛凍るわ!)
(うわぁぁぁぁん!怖かったよぉぉぉ!チョロ松兄さんトイレ一緒に行ってぇぇぇ!)
■後日■
「…ねぇあのライオン、どうやったの。」
『あ、あれ?なんかめっちゃキレたら出るようになったの!すごくない!?いーちゃんもたまに出すよね!』
「…………え?」