モブ生活始めました。

□新品の十四松
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日曜の晴れた午後、私は小宮ちゃんに教えてもらった猫カフェを満喫し、自宅へ帰るべく、いつもの川沿いを歩いていた。


するとその川原で素振りをしている人物を発見。

エルヴィン!!

と思って走り出したが、近づくにつれて様子がおかしいことに気づく。


……あれ?白いからユニフォームかと思ったんだけど違う。なんかヘルメット?被ってる?……ん?マント?


段々十四松くんじゃないのか?と不安になったが、素振りをしていた人物が私に気づき手を振ってきた。

「凛ちゃーん!」

やはり十四松くんだった。

しかし手を振りながら走ってくる十四松くんは今、とんでもない格好をしている。


……な、なんでブリーフ姿なのぉぉぉぉ!?


『ちょ、ちょっと十四松くん!?服どうしたの!?誰かに盗られた!?それともイジメ!?』

誰だうちの可愛いエルヴィンにこんな真似をした奴はぁ!?許さん!!

私が怒りの闘志を燃やしていると、十四松くんはこてん、と首を傾げて不思議そうにしてみせる。……かわいい。


「いじめ?ちがうよ、ぼく新品ブラザーズだよ!あ、そうだ!凛ちゃんにこれあげる!ウォータージャンピングストーン!」


そう言って差し出された平たい石。

わぁ、ありがとう!……っじゃなくて!新品ブラザーズって何!?ウォータージャンピングストーン!?もしかして水切り用の石でしょうか、十四松氏!?


ちょっとお姉さんに説明してね、と十四松くんを座らせ、話を聞く。


ーーーどうやら彼はお馬鹿な兄弟に混じって、川原でバーベキューを楽しむ大学生たちがいかがわしい行為をしないよう見張るというヒーロー(?)ごっこをしたらしい。

その後大学生に混じってバーベキューを楽しんだが、酔っぱらった兄弟たちが何やらしでかし、皆帰ってしまったから一人素振りをしていたと。……ヒーローではないね、それ。完全に悪役だね、ショッカーだね。

それになんでその衣装選んだかな?そのマスクまさか手作りですか?いーちゃんもまさかブリーフだったんですか?でしたらちょっとだけ拝みたかったんですけど?

しかし私の期待とは裏腹に、いーちゃんたちの衣装はブリーフではなかったらしい。……残念。


『でもそれ、捕まるよ十四松くん!私エルヴィンがブリーフ姿で捕まるなんて嫌だよ!?』

「え!?つかまっちゃうのぼく!?が〜ん!」

ってお願いその格好でエルヴィン声ださないで〜〜〜!(泣)
最近私がエルヴィンと口にすると、私を喜ばせようとわざと低い声で話してくれるんだけど、今のその姿ではきついわ〜!


『とりあえずこれ着て?』


今日は暖かく、使われず仕舞いだった薄手のトレンチコートが役に立つ時がきた。

「いいんすか!?あざーす!」

と言ってコートを羽織った十四松くん。

さすがに女物のコートは羽織ることしかできないが………。


………変態感が増した!!


ですよねー、コートの下パンツ一丁って、どう考えても危ない人だよねー!


『……ごめん、やっぱコートないほうがいいかも』


私は首に巻いてあったマントを、十四松くんの腰に巻き直して今日は帰るよう促した。



ーーーどうか明日の新聞に、十四松くんが載ってませんように。



だが私のそんな心配事など、この世界では些細な出来事らしく、彼が警察のお世話になることはなかった。

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