モブ生活始めました。
□モブ6を観察
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猫背のモブ6と接触してから早一週間。
暇を見つけては、あの猫の溜まり場に足を運んでいたけど、どうにも彼に会うことはできずにいた。
前に会ったのは平日の昼間だったし、時間帯が合わないのだろうか。……警戒して来なくなったとかだと心臓キュッてなるけど。
いやいや、猫たちはどうもエサをもらってるようだし。
だってお腹いっぱいのときはにぼしに目もくれないもんね!あ、ちなみに私はにぼし一本でなつかせようと思います!
ああ〜、しかしあの猫背のお兄さんは元気にしているだろうか。血色悪そうだし毛並み悪いし猫背だし。あ、ねこちゃんなら猫背でいいのか。あ、いや奴は人間だった。
猫背のお兄さんっていうかお兄ちゃんの方がしっくりくるな〜。結構年下っぽいし。猫背のお兄ちゃんか〜、ね こ ぜ の お に い ー ち ゃ ん。略して"いーちゃん"。どこ略してんだって?だって猫っぽい可愛いアダ名にしたかったんだもん。いーちゃん可愛いじゃん。よし決定!
しかしこの一週間、他のモブ6は見るものの、お目当ての神声モブ6といーちゃんには全く会えずにいる。
そろそろ兵長切れだよー!私に兵長プリーズ!
せっかくまた平日に休みを貰えたのに兵長にもいーちゃんにも会えないなんて。
仕方ない、今日は大人しく帰るか。
小さく溜め息を吐いて雑貨屋のウインドウから目を反らそうとした時だった。
「てめぇの爪の色なんざ興味なさすぎてケツ毛燃えるわブス!」
どわー!?へ、兵長!?声のトーン違うけど絶対兵長!兵長だよ!?てか兵長ケツ毛って!ブスは是非とも言ってもらいたい!振り向く!?いや振り向いたら声盗み聞きできない!
雑貨屋を覗いているフリをして聞き耳をたてる。
「なんでケツ毛燃えんの?」
お、こいつは初めて聞く声だ。なかなか可愛らしい声してるじゃないか。てかやっぱ一緒に行動してるんだ、モブ6。
「怒りでじゃない?結果いちばん酔うっていうね……」
あ、これ赤パーカーだ。……あれ?いーちゃんの声がしない。
そっと振り返ると、モブ6がちょうどすれ違うところだった。
………お、おお。今日は同じカッコだぞ。見事に区別つかないけど、猫背さえ見つければ……ん?もしかしてあの可愛い顔でおんぶされてるの、いーちゃん?いや、絶対いーちゃん。あの毛並み、間違いない。
な、なんだそれー!?聞いてないぞ!?そんなどこぞのモブ6になつきやがってェェェ!チーかまとビール1本じゃ足りないってか!?くそぅ、あのおぶってるモブ6はどこのどのモブ6じゃ!?うちのいーちゃんをよくも!
「お疲れ様です!」
ん?あ、これも初声だ。んん?なんか聞いたことあるよーな?
えー、誰だっけぇ?絶対聞いたことあるー!
初声のモブ6に気を取られているうちに、いつの間にか彼らは通りすぎていった。
あ、ああ、兵長〜!いーちゃん〜!
でも会えただけよしとしよう。しかしあの声、そしていーちゃんがデレるあのどこの馬の骨モブ6、気になる。