死龍の軌跡
□二十七章
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「おーいっ!! 小舟が流されてるぞっ!!人が乗ってるみてぇだっ!誰か頭に知らせてこい!!」
船首付近で見張りをしていた子分が大声を出した。
リン「なにかしら!?」
ヘクトル「行ってみようぜ!!」
気持ちの整理がある程度晴れた二人も早速その場所に向かいだした。
既に人だかりができており二人は間を縫って和の真ん中に入った。まだ小舟は揚げられてないようで誰が乗っているのか分からないがエリウッドとファーガスは不穏な顔をしていた。
ヘクトル「よお!エリウッド。どうしたんだ?」
エリウッド「ヘクトル・・・ファーガスさん曰く海流の流れからこの小舟は【魔の島】から来たららしい。」
ヘクトル「何だと?」
エリウッド「取り敢えず揚がるまで待とう。」
ヘクトル「だな。それとファーガスと話は済んだのか?」
エリウッド「ああ。とても信頼できる方だ。」
ヘクトル「ふ〜ん。ま、お前がそう言うのなら間違いないだろ。」
暫く二人で会話していたがリンの言葉で中断することになる。
リン「・・・・ニニアン!?」
エリウッド「え?」
ヘクトル「??」
ようやく小舟が上がり乗っていたのは少女。しかも二人の顔見知りだった。
??「おい嬢ちゃん!!」
ファーガス海賊団の子分のひとりダーツは突然リンに話しかけた。
リン「私?」
ダーツ「ちょっと手伝ってくんねーか?
どこを持ったもんか・・・困る。」
リン「・・・いいわ。」
そういうことかとリンはニニアンを運んだ。
ヘクトル「意外に紳士だな。」
ダーツ「うるせえっ!」
ヘクトルがダーツをからかうなか、リンはニニアンを安全な甲板へと運んだ。
エリウッド「まさか・・・こんなところで会うなんて。」
ヘクトル「知ってんのか?」
エリウッド「一年前、リンたちと出会った時偶然助けた女の子なんだ。」
ヘクトル「あぁ・・確か二月に一度の手合わせでお前が珍しく遅れた時か。」
それと父の恩人に初めて会えた日でもある。
リン「ニニアン!目を開けて!!」
頭を打っている可能性もなくはなかったのでリンはひたすら声を掛けていると
ニニアン「・・・・・・あ・・・・」
リン「ニニアン、気がついた?」
ニニアン「・・・あの・・・わたし・・・・・・」
リン「大丈夫? どうして小舟になんて乗っていたの?ニルスは、いっしょじゃないの?」
リンは様々な質問を投げかけるが
ニニアン「・・・・・・あ・・・あ・・・」
意識が覚醒しきってないのかニニアンは不安定な言葉が返ってくるだけだ。
リン「ニニアン?」
何かおかしいと思って再び声を掛けようとした時だった。
ダーツ「お頭っ!!4時の方向に海賊船発見!こちらに近づいてきます!!」
ここからでもわかるダーツの叫び声。
ファーガス「ファーガス海賊団としってしかけてきやがるか!どこのバカだ!!」
ダーツ「旗は・・・見たことねぇ柄です!」
ファーガス「んだと!?くっそ、妙な事ばかり起きやがる・・・。」
エリウッド「!!来る!!」
【ガシャアン!!!】
正体不明の海賊船はあっという間に船の側面に張りついた。
「うわぁああああああああ!!水だっ!! 船底に穴ぁ開けやがった!!水が入ってくるぞーーーっ!!!」
海賊船の海面下に杭が設置されていたらしく突撃した時に船底を食い破ったのだ。
ファーガス「なんだとぅっ!?なめたマネしてくれるじゃねぇかっ!!」
ただじゃおかねえと愛用の斧を振りかざそうとしたが
「お頭っ! かなりひでぇっ!!全員でかからねぇと船が沈んじゃまわぁ!!!」
ファーガス「なんとかしやがれっ!!オレはこいつらのどたまかち割ってやらんと気がすまねーんだっ!!」
「無理ですってー!食料庫にまで水がまわってるっ!!降りてきてくださいよ、お頭っ!!」
いつもは折れる子分であったが余程の非常事態に悲鳴が上がった。さらに敵の魔導士が船の側面を攻撃しだし船全体が揺れだした。
ファーガス「てめえ!!俺の船に何しやがる!!」
しかし、ファーガスが攻撃するより何処から手斧が放たれ魔導士を撃退した。
ヘクトル「敵を蹴散らすのは俺たちだけでも大丈夫だっ!けど、沈みかけてる船をなんとかしてくんねーとみんなそろって海のもくずだぜ?」
リン「私たち、責任もちますから。早くっ!!」
ファーガスは二人を見て笑った。
ファーガス「わかった! まかせよう!!しばらくもたせてくれりゃ穴をふさいで、加勢に戻っからよ!!」
そう言ってファーガスは素早く船底に向かっていった。
ヘクトル「エリウッド。お前はニニアンって奴と一緒に船室へ運んどけ。」
エリウッド「!?何を言って・・・っ!・・。」
一昨日やられた傷が痛みだしたのかエリウッドは呻き膝をついた。その上、ギブスをしているので戦うのは無理だった。
リン「ここは私達に任せて!」
エリウッド「・・・すまない。」
二人が無事に避難したのを確認すると早速乗り込んだ海賊・・・いや、【黒い牙】を切り捨てた。
リン「・・・行くわよ。」