死龍の軌跡
□二十五章
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リンが北の森、ヘクトルが南の闘技場、エリウッドが街の中心部を攻める一方で空中でも激戦が行われていた。
フロリーナ「・・・・。」
フロリーナは目の前にいる同じペガサスに乗った蒼い髪の少女と向かい合っていた。
フロリーナ「どいてください・・・私はどうしても倒さないといけない人がいるんです。」
フロリーナの言葉には耳を傾ける様子もなく少女は突撃した。フロリーナも対処しようとするが
【ピッ!】
フロリーナ「!?」
直ぐ近くを矢が掠め怯んだ隙に相手のペガサスが体当たりをしてきた。直ぐに体制を整えたが特殊な槍がフロリーナの肩を掠めた。
フロリーナ「(あの黄緑の槍・・・確かウイングスピア?)」
ペガサスナイトの王女のみが扱うことのできる伝説の槍を何故ガリアスの召喚兵が持っているのか分からなかった。だが、伝説の槍の効果がそのままなら騎馬に分類されるペガサスナイトであるフロリーナには不利だ。
更に、すぐ下には金髪の青年スナイパーがフロリーナを射抜かんと待ち構えている。
フロリーナ「(あのスナイパーさえいなければ・・!)」
再び少女が仕掛けてきた。だが、今度はフロリーナも同時に動き出した。透かさず下から矢が飛んでくるが重装備にした右手でダメージ覚悟で受け止め相手の天馬の下に潜り込んだ。
「!?」
天馬騎士にとって下からの攻撃には完全に無防備だ。フロリーナは少女の右足を突いた。
これであっちは手負いの状態だ。チャンスと思い追撃しようとするが
【シュッ!】
矢がゆっくりこっちに近付いて見える。相手が速射の達人でフロリーナが想定するより速く矢を放ったのだ。
ダメージを覚悟したフロリーナだが
シルフ「'ウォーター'!!」
シルフの放った水球が矢を絡め取った。
フロリーナ「行ける・・!」
驚異がなくなりフロリーナは槍で薙ぎ払い少女の肩から胸にかけて切り裂いた。
「マルス様・・・どうか御無事で・・・・」
少女は堕ちながら言い残すと地面に激突せずに天馬と共に消えた。
シルフ「こっちは僕達に任せて!!リンディス様が北の森に一人で行っちゃったから急いで向かって!!」
フロリーナ「リンが!?ありがとう!」
直ぐにフロリーナは馬腹を蹴り北の森へ向かった。
シルフ「良かっ‐ウィル「伏せろ!」」
安堵する間もなくウィルに強引に即席のバリケードまで連れていかれた。
直ぐにバリケードに無数の矢と魔法の攻撃が直撃した。二人が隠れきるとピタリと攻撃が止んだ。
バリケードにはウィルの他にレベッカとエルクがいた。
ウィル「アイツ・・ただ、速射だけじゃなくてかなりの剛腕の持ち主だぞ。」
壁に刺さった矢を無理やり引き抜くと矢の半分以上が壁にめり込んでいた。
エルク「あの増援の魔導士・・・かなりの実力者だ。」
エルクは隠れながら緑髪の少年魔導士を指さした。
シルフ「どうするの?」
レベッカ「だったら・・・」
レベッカは偶々落ちていたビンを民家の窓に置いた。ウィルも何かを察したようにバリケードによっかかりながらビンを様々な角度から観察しだした。
ウィル「レベッカ・・頼んだ。」
レベッカ「えぇ」
するといきなりレベッカがジャンプしながらスナイパーに矢を放った。透かさず少年魔導士が矢を雷で相殺したが
ウィル「喰らえ!!」
なんとウィルは相手を一切見ずに上空に矢を放ちスナイパーの右肩に的中させた。
エルク「まさか・・・ビンを鏡代わりに!?」
ウィル「そういうことっす!さあ反撃っすよ!」
スナイパーの方は近付けば手負いのため直ぐに倒せたが魔導士の方が手強かった。
「'トロン'!!」
ただでさえ初めて見る直線雷撃魔法を薙ぎ払いで使ってくる
シルフ「うわっ!」
シルフの水魔法も雷で蒸発されエルクの雷魔法も魔道書も下位魔法なので相殺できない。弓使いの二人も魔法でいなされ手出しができない。
エルク「強い・・。」
魔導士の持っている魔道書かなりのものだが持ち主の魔力も師匠を除けばエルクが今まで戦った中で一番高い。
だけど数では珍しくこっちが有利だ。
エルク「行くぞ!」
四人が一斉に襲い掛かった。雷魔法で重くて対処しきれない。少年は黄緑の魔道書に持ち替えた。
「エクスカリバー!!」
全方位の風魔法
ウィル「ぐっ!」
レベッカ「きゃあ!」
魔法に耐性があまりない二人は吹き飛ばされてしまった。
エルク「サン・・!」
魔法体制のあるエルクでさえも風の刃に詠唱を中断された。
シルフ「'スライサー'!!」
何とかシルフが水の刃を飛ばしたが風にあっけなく切り裂かれてしまった。
万事休すと思った時、エルクが傷だらけの体になりながらも
エルク「'ファイアー'!!」
ファイアーをフルパワーを発動させた。すると急激な炎により上昇気流が発生し風が全部エルクの方に流れた。
シルフ「'スライサー'!!!」
渾身の力で魔法を唱え今度こそ魔導士の体を切り刻んだ。
「マルス・・・エリス様・・・。」
同じように散り際のセリフを言ってから消えた。
エルク「こんなのがまだたくさんいるなんて・・・。シルフ。君は僕らよりも元気だ。だからフロリーナを追ってリンディス様の所に向かうんだ。」
シルフ「でも・・・・うん。」
一瞬躊躇ったがシルフは北の森へ向かった。
エルク「僕らは衛生兵の所に向かおう。あまりにも傷を負いすぎた。」
ウィル「だね。立てるか?」
エルク「何とか」
ウィルは気絶したレベッカを背負いエルクと共に一旦戦線離脱した。
偶然にもリンの向かった北の森にガリアスはいた。
ガリアス「ジェイガン、ミネルバ、シーダ、ジョルジュ、マリクが破壊されたか・・・。もしかするともう何人かこっちに来てるかもしれないな。」
何とも言えぬ表情で戦闘の行く末を見ていた。