死龍の軌跡
□二十五章
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無法者と交渉するので気を引き締めながら酒場に入ると案の定、中には昼にも関わらず飲み干された大量のジョッキがテーブルに置かれており屈強な男たちが馬鹿笑いをしながら盛り上がっていた。二人は奥にいるという海賊の頭に会った。
??「おう、ガキども!おまえたちかオレに会いたいってのは?」
見た目は還暦に近く所々白髪が混じってはいるが体つきと眼光から一切の衰えを感じさせなかった。きっとこの男が頭だろう。エリウッドは早速口を開いた。
エリウッド「あなたが海賊団の船長殿ですか?」
「ガッハッハッ!「船長どの」かいかした呼び方だな。ぼうず! おまえよほどの世間知らずかそれともバカかどっちだ? ああ?」
ヘクトル「なんだとっ!?」
エリウッド「ダメだ! ヘクトル!!」
エリウッドが間に入り取り敢えずヘクトルは落ち着いた。
エリウッド「・・・僕の言葉使いがおかしいのなら、改めます。なんと、お呼びすれば?」
エリウッドの変わらぬ態度に男は真顔になった。
「ふん・・・ 怒りもびびりもしねぇか。少なくともバカではないようだな。「かしら」だぼうず。オレは、ファーガス海賊団の「頭」ファーガスだ。」
エリウッド「ファーガス・・・さん?それとも、「お頭」とお呼びした方がいいですか?」
ファーガス「おまえはオレの手下じゃねぇ。ファーガスでいいだろう。で? 用はなんだ?」
エリウッドは単刀直入に要件を伝えた。
エリウッド「僕らをヴァロール島へ連れて行ってほしいんです。」
その瞬間、周りの手下達は信じられない物を見る目で二人を見た。だが、ファーガスだけはエリウッドの話を真剣に伝えていた。
ファーガス「いくらだす?」
エリウッド「相場が分かりませんのであなたの望む額を言ってください。」
ファーガス「十万ゴールドだ。」
ヘクトル「じゅ、十万だと!?ふざけんなこの親父!!こっちは真剣に言ってんだぞ!!!」
信じられない額にヘクトルはブチ切れる寸前いや、既に切れていた。十万ゴールドがあれば軍隊一つの武器や兵糧を全て補える額だ。
エリウッド「ヘクトル」
エリウッドは凄みのある声を出した。これにはヘクトルも黙るしかなかった。
ファーガス「どうした?まさかまけてくれとでも言うんじゃねえだろうな」
エリウッド「いえ、確かここの南部に闘技場がありますね。」
ヘクトル「おい、まさか・・・。」
エリウッド「申し訳ありませんが今は手持ちが不足しています。なので闘技場を潰すぐらい稼いで戻ってきます。」
長い付き合いであるヘクトルでさえこんなエリウッドは見たことがなかった。それ程本気だということである。
ファーガス「フッ、ガハッハッハ!!!」
突然、ファーガスが大笑いをしたので二人は呆気にとられてしまった。
ファーガス「俺は長年海賊業やってるがお前みたいな挑戦者は初めてだ。まさか本気でヴァロール島に行くやつが現れるなんてな。おい、お前ら。お前らよりもひよっこなぼうずがこんな肝座ってんだ。俺達も負けてらんねえぞ!!!!」
手下達がおー!!と叫ぶとすぐさま出航の準備にかかった。
エリウッド「えっと・・お金の方は・・・。」
ファーガス「バカ!!そんなんどうでもいいんだ。すぐ出航すぞ。」
ファーガスも急いで出航の準備にかかった。
親友の度肝を抜く発言にヘクトルは溜息をついた。
ヘクトル「ったく!お前には時々驚かされるぜ。」
エリウッド「ヘクトル、何か言ったかい。」
ヘクトル「まあ、何はともあれこれで船の心配はなくなった。」
エリウッド「ああ、これでやっと・・・」
??「簡単に済むと思うなよ。」
突然の第三者の声。
エリウッド、ヘクトル「「!?」」
声のする方を振り返るとローブを着た青年が椅子に座っていた。
ヘクトル「お前はガリアス!!」
ガリアス「久し振りだな。エリウッドにヘクトル。」
ガリアスが呑気に話すのに対して二人は既に武器を構えていた。
ガリアス「随分と嫌われたなあ。」
ヘクトル「二回もやられかけて嫌わねえ方がおかしいだろ!」
ヘクトルは斧を振り下ろす。だが、ガリアスは容易くかわした。
エリウッド「何故、君が僕達の邪魔をする?まさか・・・」
レイピアで突き刺そうとしたが刃身を掴まれた。
ガリアス「俺が黒い牙だっていうのは否定させてもらう。」
ガリアスは振り払い間を取った。
エリウッド「じゃあ、何故!?」
ガリアス「お前こそ敵がどんな奴らか分かってるのか?」
魔道書を開きガリアスの周りが光りだした。
ガリアス「お前たちの覚悟は見さしてもらった。前はやり損ねたが今度は確実に潰す。」
呪文を瞬間に詠唱すると酒場の床から生えるように人が現れた。
エリウッド「しまった!ガリアスは闇魔法にも長けているんだった。」
ヘクトル「何!?」
ガリアスに召喚された人が二人に襲い掛かった。
エリウッド「くっ!」
咄嗟にレイピアで防いだが。
エリウッド「(お、重い!?)」
剣で襲い掛かった男はどこかマーカスに似た雰囲気を持つ歴戦の老兵だった。剣の重みが明らかに違った。
ヘクトル「オラァ!!」
ヘクトルが老兵に体当たりすると老兵はバランスを崩しその隙にエリウッドがレイピアで胸を串刺しにした。
「マルス様あとはたのみましたぞ・・・」
聞いたことのない名を言うと老兵は霧のように消えた。そしていつの間にかガリアスが姿を消していた。
ヘクトル「何だコイツ。最後に訳分かんねえこと言いやがって。」
エリウッド「それよりもガリアスは試すといっていた。なら、皆が危ない!」
ついに始まった。伝説暗殺者【断絶鬼】との戦いが。