死龍の軌跡

□二十四章
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ベルナルドを粉砕し玉座を制圧したエリウッド。玉座の奥の侯爵の部屋に突入したはいいが。

エリウッド「誰もいな・・!?」

侯爵の部屋に来たもののダーレンやエフィデルはおろかハウゼン候までいない。ただ、一つだけ侯爵の部屋にあってはいけないものがある。

エリウッド「これは・・・血か?」

ハウゼンが座っていたであろう椅子の周りのカーペットが血で染まっていた。この時点でエリウッドはハウゼン候は怪我をしたか最悪、殺された可能性をあんじた。

エリウッド「ハウゼ・・・誰だ!?」


誰かいる・・・戦士としての勘がそれを告げていた。それが正解であるかのように何処からか女性が現れた。

エリウッド「誰だ・・・?」

エリウッドが警戒していると

ヘクトル「お前・・・レイラじゃねーか。」

ヘクトルが遅れてやってきた。

エリウッド「知り合いかい?」
ヘクトル「あぁ、俺の家で雇っている密偵だ。」

要約、エリウッドの警戒が解かれるとレイラがここで何があったのか話し始めた。



数時間前


ダーレン「ば、馬鹿な・・・バウカーまでもが。」

ラウス兵の中でも抜き出た実力者の一人であるバウカーがやられた。ダーレンは崩れ落ちながら頭を抱えた。すると今まで大人しくしていたキアラン候ハウゼンがゆっくり駆け寄るとダーレンの背中を優しくたたいた。

ハウゼン「ダーレン殿。 もはやここまでじゃ、あきらめられよ。これ以上の抵抗は無意味・・・そなたのやったことは決して許されることではないがまだ間に合う・・・すべてをエリウッドに打ち明けオスティア侯へ、とりなしてもらえば悪いようにはせんだろう。」

ラウスによる蛮行を受けたにも関わらずハウゼンは人柄ゆえにかそれを許した。

ダーレン「わしの・・・負け・・・か。」
ハウゼン「さぁ、間もなくエリウッドたちがここに来る。わしからも口添えを・・・」


ハウゼンが微笑んだ時・・・

ハウゼン「グッ、グワァッ・・・!!!」

笑顔が歪んだ。彼の胸からは銀の刃が突き出ていた。

エフィデル「困りますね。 ラウス侯につまらぬ入れ知恵などされては。」

血を吐き倒れるハウゼンをエフィデルがフードからでも笑っているのが分かった。

ダーレン「エ、エフィデル殿っ!?」
エフィデル「今さら何をしようとも、あなたには後戻りなどできないはずですよ。なにしろ、サンタルス侯爵に続き・・・キアラン侯爵まで手にかけられたのですから。」
ダーレン「な!? どちらもそなたがやったことではないか!!わ、わしが望んだのではない。」

エフィデル「ええ。 私が・・・あなたのために。」
ダーレン「わしを・・・はめたのか?」

ここで初めてダーレンが反抗的な態度をとったがエフィデルは落ち着いていた。

エフィデル「滅相もない。私は、我が主の命に従いあなたの野望をかなえて差し上げようとしているのです。あなたを統一リキアの国王に・・・そしていずれは、この大陸を支配する王に・・・そうでしょう?」


もしダーレンが領主としての良心が残っていればまだ思い止まっていたのかもしれない。


ダーレン「・・・そうだ。 そのために、多少の犠牲は仕方ない。そうだな?」


彼は完全にエフィデルの傀儡になっていた。


エフィデル「そのとおりです。・・・予定は大幅に狂いましたが、我が主の力があるかぎり・・・我々に、敗北はありえません。さ、うるさい虫どもが来る前に脱出しましょう。ラウスから連れてきた兵は全てここでお捨てなさい。やつらの足止めに使うのです。」


兵を全て捨てる。それが何も意味しているのか分かるのだろうか?民あっての王である。

ダーレン「兵を全て・・・置いて?では、わしの身は・・・誰が守るのだ?」


ダーレンが心配したのは自身の安全。最早、彼には王としての素質はない。

エフィデル「私と【黒い牙】がいればことは足ります。最早なにも必要ありません。」
ダーレン「う、うむ、わかった。それで・・・次はどこへ行くのだ?」


エフィデル「【竜の門】へ・・・あそこには、我が主がおられる。主からの知らせによれば、この間、捕えたあの男・・・うまくいけば、あやつ一人でも「儀式」ができるかもしれません。」
ダーレン「おお! そうか。ならば、もう何の心配もいらんな。」

エフィデル「そのとおりです。では、一足先にお逃げ下さい。私はここで、二、三指示をだしすぐに追いつきます。」


ダーレンが何人かの【黒い牙】に連れられて立ち去った後、エフィデルは不機嫌な表情を浮かべた。

エフィデル「・・・おろかな男だ。」




エフィデル「レイラ、いるか?」

レイラ「ここに。」

先程、エリウッドの前に現れたレイラである。しかし、彼女がいるのは潜入のため。決して心から従ってはない。


エフィデル「エリウッドたちが城内の敵と戦っている間にキアラン侯にとどめをさし死体を隠すのだ。二重の足止めになろう・・・」


レイラ「仰せのままに。」
エフィデル「・・・おまえは、【黒い牙】に入って日が浅い。だが、その手際はなかなかのものだ・・・これからの働き期待しているぞ。」
レイラ「はっ!」

レイラの返事を確認するとエフィデルは竜の門へ向かうため転移魔法で姿を消した。


これが玉座で起こったことである。
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