死龍の軌跡
□二十四章
4ページ/6ページ
牢獄前
刀と剣が火花を散らしていた。
リン「ハァ・・ハァ・・」
レイヴァン「・・・くっ・・。」
ぶつかり合いを何度も行っているが未だに決着がつかない。
リンが仕掛ける。レイヴァンは剣で受け止めカウンターで振り下ろす。半歩下がって対応するがレイヴァンは連続攻撃を仕掛ける。
リンは大きく下がり今度は壁走りでレイヴァンの背後に着地間際に背中に一撃を加えた。
レイヴァン「くっ!」
更にもう一度振り返りながら薙ぎ払ったが流石に防がれた。
レイヴァンは両手から右手だけに剣を持ち替えリンに仕掛ける。一撃は軽くなるが素早さが増すためだ。
何度か打ち合ううちにリンが段々押され始めた。
リン「くっ!」
リンの一番の長所である速さが互角に近づいてきている。まるでガリアスと戦っているようだ。
だが、リンが意地をみせレイヴァンに隙を作らせた。
レイヴァン「!?」
リンは逃さず右手を蹴り上げた。レイヴァンがよろけた。すかさずリンが攻撃しようとするが
リン「ぐっ!」
ダメージを負ったのはリンの方で剣が右肩に刺さった。
右手にあったはずのレイヴァンの左手に剣がある。
よろけた振りををして実際は背中のほうで剣を持ち替えたのだ。
これでお互いが傷を負った状態になった。
リン「これで終わりにしましょう!」
リンが刀を納めて抜刀の構えをとった。
レイヴァン「いいだろう」
再び両手に構え剣先をリンに向けた。
リン、レイヴァン「「ッ!!」」
二人はほぼ同時に仕掛けた。お互い反射に近い速度で武器を振るいぶつかり合った。
しかし、ここで武器の差に明確な差が出た。リンの使う刀はサカの誇る名刀マーニ・カティ。対してレイヴァンは手入れこそしているものの普通の鋼の剣。
【バキッ!】
レイヴァンの鋼の剣が根元から折れた。
リン、レイヴァン「「・・・・・。」」
勝負はついた。レイヴァンは「無様だな」と呟くとその場に胡坐をかいて俯いた。
ヘクトル「おい、リンディス!捕虜たちは解放したか!?」
リン「ええ、無事に終わったわ。」
皮肉にもオスティア候弟ヘクトルがレイヴァンの目の前に来たが今の彼には挑むことさえできず彼が去っていくのを呆然と見るしかなかった。
プリシラ「あの・・・大丈夫ですか?」
ヘクトルに遅れて衛生兵のプリシラがレイヴァンに話しかけた。。彼女は彼もキアランの捕虜と勘違いしているのだろう。
リン「プリシラ!?その人は‐レイヴァン「プリシラ・・・?」」
レイヴァン顔を上げプリシラと目が合った。すると彼の顔から暗さが消え失せ穏やかささえ感じ取れた。
レイヴァン「俺が分からないか・・?無理もないか・・・。」
プリシラは始めよく分からない顔をしていたが直ぐにはっとした。
プリシラ「もしかして・・・レイモンドお兄様?」
レイヴァン「大きくなったな・・・プリシラ・・。」
プリシラ「兄様!兄様・・!」
プリシラは探し求めていた兄にようやく再会できレイヴァンの胸に飛び込んだ。
リンが黙って見守る中ケントが戻ってきた。
ケント「よろしいのですか?」
リン「もう大丈夫よ・・・」
会話中、牢獄から捕虜が出てくる中、一人見知ったものがいた。
リン「ルセアさん?」
ルセア「お久し振りです。リンディス様。こちらの傭兵部隊の一人として参加していましたがお城を守れず申し訳ありません・・・。」
リン「仕方ないわ・・。私も奇襲で一度は逃げるしかなかったもの。」
ルセア「今度こそお役に立てるように頑張りますね。」
するとルセアが抱き合っている二人を見て驚いた。
ルセア「レイヴァン様・・・。」
リン「・・・。」
そういえばルセアさんは前の戦いの後、連れと一緒に旅に戻ったと聞いていた。ひょっとすれば・・・。
リンは二人のもとへ歩いた。
リン「ちょっといいかしら。」
レイヴァンが「少し離れてろ」と言ってプリシラを離すと立ち上がりリンと向かい合った。
リン「あなたの妹プリシラと連れのルセアはこっちの庇護下にあるわ。」
二人を人質に投降しろと言ってるものだ。もっとも今の彼は丸腰なのでそんなこと言わなくても投降しか選択肢がないのだが。
リン「私達は圧倒的に兵力が足りない。だから、あなたを傭兵として雇います。」
ルセアとプリシラは驚きケントは何かを言おうとしたがリンに手で制された。
レイヴァン「正気か?」
リン「えぇ、ヘクトルが憎いみたいのようだけどエリウッドの話では彼、相当の斧使いよ。今のあなたでは勝てるはずないわ。」
レイヴァンは軽く笑った。
レイヴァン「後悔しても知らんぞ。」
リン「えぇ、その時はわたしが全力であなたを潰すから。」
レイヴァン「いいだろう。」
二人は握手をした。
リン「取り敢えずあなたはプリシラに治療してもらって。」
レイヴァン「フン。お前もな」
憎まれ口を叩きながらレイヴァンはその場を後にした。
ケント「リンディス様。」
リン「ケント、だから大丈夫って・・・」
ケント「あまり彼の真似をし過ぎますと皆に驚かれますよ。」
リン「っ!!//ガリアスは関係ないわ!!」
さっきまでの黒い姿は何処へやら。顔を真っ赤にするリンであった。