死龍の軌跡
□二十四章
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一方の玉座
「我はラウス騎士団の長ベルナルド!バウカーを打ち破ったその力、見せてもらおう!」
エリウッド達は早くも玉座前に来ていた。
エリウッド「これで僕のけじめをつけさせてもらう!」
ベルナルド「いざ!参る!!!」
重騎士のベルナルドは大きな斧を投げるようにエリウッドに振り下ろした。
エリウッド「!」
あたりはしなかったものの直ぐ後ろの壁が粉砕された。直撃すれば一溜りもないだろう。
ベルナルド「フンッ!」
斧には鎖がついていて鎖を引っ張るとあっという間に斧が手元に戻った。
エリウッド「仕込み斧か!」
重騎士の最高職ジェネラル。より強固な鎧に包まれるが機動力に欠ける弱点がある。しかし、武器に仕込みの鎖を付けたとえ投げたとしても鎖を戻せば元に戻ってくる仕組みだ。
この部屋は狭いこともありまさにジェネラルにはもってこいの状況だ。
ベルナルド「来ないなら一方的に行かせてもらうぞ!」
今度は武器を手放し鎖を目一杯伸ばし振り回した。
エリウッド「くっ!」
斧は勿論、鎖にもあたったらただではすまない状況。しかし、マーカスらの反対を押し切ってまで一人で挑むと決心したからにはこれを攻略せねばならない。
エリウッド「ハアァ!!」
エリウッドが取った行動は攻撃を避けつつ武器を持ってない腕にに向かうことだった。
そして鎧の隙間からレイピアで貫いた。
ベルナルド「むっ!?」
一撃を与えることに成功したエリウッドだが一つ誤算が生じた。心臓を貫いたはずがベルナルドの咄嗟の動きで左肩を貫いただけだった。
ベルナルド「フンッ!」
腕を振るい鎖がエリウッドに命中した。
エリウッド「ぐっ!」
他から見れば掠ったような攻撃だがエリウッドは右腕が痺れて使えなくなった。
エリウッド「次で決める・・!」
ベルナルド「望むところ!!」
お互い手負いの状態。この一撃に全てを賭ける。
エリウッド「ハハァァ!!」
エリウッドは防御を捨てて急所を突くシンプルな戦法。
ベルナルド「オオオォ!!」
ベルナルドはここぞのタイミングで斧を投げたがエリウッドにはあたらなかった。
エリウッド「もらっ‐ベルナルド「甘いわ!!」え・・?」
ベルナルドは相手を引き付けての全方位の薙ぎ払い。
ベルナルド「これで終わりだ!!」
斧が走馬灯のようにスローモーションに見える。
父上・・申し訳ありませ・・・
【ブチッ!!】
ベルナルド「な!?」
エリウッド「・・?」
斧を繋ぐ鎖がエリウッドの目の前で切れた。
【グサッ!】
エリウッドの一撃は鎧の隙間の心臓を確実にとらえた。
ベルナルド「ぐはっ・・我らラウスの蛮行を思えば、当然の報い・・・か。」
どこか自分の行いを後悔していたのか詫びるようなことを言い残しベルナルドはその生涯を終えた。
エリウッド「鎖が偶然切れた・・?」
そんな筈はない。彼が武器の点検を怠っていたのかそれとも・・・
エリウッド「・・・!?」
誰かいる・・・背後を振り返った。すると窓のはるか向こうの木にローブを羽織った誰か立っている。
エリウッド「誰だ!」
しかし、エリウッドが瞬きした途端、誰かは消えていた。