死龍の軌跡

□二十七章
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海は草原と同じくらい広く優しい。
リンが海のことについて聞いたとき母はそう答えてくれた。父と駆け落ちする前、よく海に来ては悩みを打ち明けていたらしい。答えは返ってくることはなかったが母は何処か満足していたという。しかし、その母は一年前に凶賊の刃によって命を落としている。



リン「・・・・・。」

リンは船首付近でで一人たたずんでいるのと同時にかなり不機嫌な顔をしていた。

理由は二つ

一つは自分が大嫌いな海賊の船に乗っていることだった。リンの両親及び仲間を惨殺した凶賊は山賊だが海と山の違いだけで賊は賊であった。

しかし、一年という時間が彼女の考えを少し変えた。話によるとここの海賊は略奪行為は殆ど行っておらず役人相手に抗争を行ったがために海賊扱いされてしまったのだ。なのでそれを除けば彼らは普通の船乗りだった。それもあってか不機嫌の原因は二割。

そして残りの八割は・・・



【ザンッ!!!】

ガリアス「ガハッ・・!」




リン「・・っ!・・。」

思い出しただけでも胸が痛くなった。引けぬ理由があったとはいえ自分の好きな人を自分の手で斬ったのだ。
確かに怒りはあった。これほど待ち焦がれていたのに一年行方を眩ました挙句、エリウッド達を襲った。だが、実際にガリアスを斬った時、途轍もない後悔に陥った。

もっと他に方法があったのではないか?


リン「ガリアスっ・・・。」

愛刀は精霊に祝福された刀。これでガリアスに致命傷を与えれば命を奪うことができた。もし、あの後彼が死んでしまったらと考えると怖かった。



リン「一人にしないで・・・・。」

そう呟くと後ろからガシャガシャと鎧の擦れる音が響いた。

ヘクトル「エリウッド!・・・っと、あれ?」

ヘクトルだった。どうやらエリウッドを探してここまで来てしまったらしい。確かエリウッドは確か船尾付近で海賊の頭領と話していたはずだ。

リン「エリウッドなら船尾で海賊の親分となにか話しこんでるわ。」
ヘクトル「そっか。 そんじゃ邪魔しないでおくか。」

そういいつつも中々立ち去ろうとしないヘクトルにリンが口を開いた。

リン「・・・・・・まだ、何か用?」
ヘクトル「おまえな、その不機嫌なのなんとかしろよ。【魔の島】に渡るには海賊船に乗っけてもらうしか手段がねえって割り切ったんじゃねえのか?」

リンは少し黙ったが

リン「・・・・そうね。」

とすれば海賊以外でリンが不機嫌な理由はヘクトルでも直ぐに分かった。


ヘクトル「やっぱアイツか・・・?」
リン「・・・・た・・・。」
ヘクトル「??」

リン「私・・・ガリアスを斬っちゃった。」
ヘクトル「お前!?まさかアイツを・・!」
リン「ええ!そうよ!!私は一緒に旅してた時から好きよ。両親が賊に殺されてからずっと一人ぼっちだったからとても嬉しかった!!!」


ガリアスにとってはとても短い間ではあったがとても満たされた。

リン「だから・・・ガリアスが竜だと知った時も全然怖くなかった。むしろ自分から秘密を教えてくれてもっと彼のことを知りたくなった。なのに・・・」

リンは自分の手を恨めしく見た。

リン「私はそんな好きな人を斬ってしまった。しかも一切躊躇わずに・・・。」

するとヘクトルは何も言わずにリンに背を向けた。


リン「!!・・・な・・・に?なにしてる・・・の?」
ヘクトル「・・・おまえみたいな気の強い女は泣き顔、見られんの嫌がるかと思って。」
リン「・・・!!」

いつの間にかリンの両目から涙が流れていた。リンは慌ててさっと拭き取ると

 
リン「ばかじゃないのっ!だったら、背中なんか向けてないでさっさとどこかに消えてよ!!」
ヘクトル「俺はお前みたくそういう相手はまだいねえけど・・・・まあ、なんだ・・・お前の気持ちは分からなくないぜ・・・・。」

男女の間柄に疎いヘクトルでさえもリンがどれ程ガリアスを大切なのかわかった。

リン「・・・ほんとばかね・・・。そんな気の使い方・・・・初めて聞いた。」

もう大丈夫だろうと思いつつもヘクトルはガリアスに苛立ちを覚えた。

ヘクトル「(やり方っつうもんがあるだろ。次会ったら一発殴る。)」


ガリアスが殴られる回数が31発に増えた。


































ガリアス「・・・・っ!?なんか悪寒が・・・?」
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