死龍の軌跡
□二十四章
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【ズドオォン!!!】
キアラン城門が大きな音を立てて開いた。
エリウッド「突撃!!!」
エリウッドの掛け声と共に皆が城内に突入した。
リン「おじい様。絶対に助け出して見せるわ。」
ラウス兵の大半は敗れたものの城内にいる兵は精強なものが多いとマシューからの報告があり油断ができなかった。
ヘクトル「・・・っ!?」
ヘクトルは何かに驚いたのか身震いして止まった。
シルフ「ヘクトル様?」
ヘクトルのらしくない行動にシルフは思わずキョトンとした。
ヘクトル「いや・・・なんか悪寒がするってか誰かに命を狙われているような感じがな・・・。」
シルフ「だって大将じゃん。」
公になってないとはいえヘクトルはこの軍の中ではエリウッドと同じ立場だ。それなら命を狙われるのは当然でありヘクトル自身もそれを理解しているはずだが・・・。
ヘクトル「いや、今までとはまた別だ。なんつうかなぁ・・。」
シルフ「もう!どうせその人とも戦わなくちゃいけないんだからいくよ!!」
ヘクトル「だな。んじゃ、キアランの捕虜でも助けるか。」
突入する前にマシューからこんな情報を得ていた。
マシュー「キアランの文官や召使い、それと何人かの兵が囚われてますね。」
抵抗しなかったのか理由があったのか定かではないがとにかく彼らを見捨てることはできなかった。そこでリンをはじめキアラン勢と何人かが救出に向かうことになった。
一方、その牢獄にて
??「おい、そこのお前。俺をここから出せ。」
「な、何だと?」
赤い髪に鋭い眼光に鍛えられた肉体をもった青年だった。
??「お前らの敵の中にオスティア侯の弟がいるな?お前らに力を貸してやるからその侯弟をやらせろ。・・・オスティアに恨みがある。」
青年の信じられない言動に門番は驚きを隠せない。
「バ、バカを言うな!お前はキアラン侯に雇われたのだろうが!!そんな言葉が信用できるはずが・・・!」
「・・・ならば、ここで扉を破りお前を倒して出るまでだ。お前らが人質にしたルセアは今、こちら側にいるしな・・・」
「・・・!?」
脅しではない。この男は本気でやる。それができる力を持っていると門番は感じ取った。
門番が青年に畏怖の念を抱いていると金髪の女性に間違われそうな青年ルセアが間に入った。
ルセア「い、いけませんレイヴァンさま!ご恩のあるキアラン侯を裏切るなんて・・・」
彼は最初はあの戦いの後、先程から濃い殺気を漂わせている青年レイヴァンの従者をしていたが傭兵の仕事でキアラン兵と共に戦っていたが奮闘虚しく囚われてしまった。
レイヴァン「黙れ、ルセア。」
ルセアの言葉はレイヴァンには届かなかった。
レイヴァン「こちらは、無駄な戦いはしたくないのだが・・・・・・どうする?」
門番の男に選択肢はなかった。
「・・・よ、よし、いいだろう。 お前出ろ!ただし、妙な真似をしたらお前の連れの命はないと思え。」
「ああ。・・・だが、その時はお前の命もないだろうがな。」
「ぐっ・・・」
ぐうの音も出ないとはもさにこのことか何も言い返せなかった。
ルセア「ま、待ってください!お一人では危険です!!」
最後の待ったを掛けたがレイヴァンには届かなかった。
レイヴァン「ルセア、お前はそこでおとなしくしてろ。・・・後で迎えに戻る。」
彼の目はまさに修羅に堕ちる手前だった。
ルセア「レイヴァンさまっ!」
ルセアの声も届かずレイヴァンはルセアから離れていった。