死龍の軌跡

□二十三章
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リキア同盟の一つキアラン領

一年前の相続問題で一時荒れたもののハウゼンの見事な統治で以前に近い形で復興することができた。しかし、候弟ラングレンの死去と民の復興を優先したことにより軍隊の配備が手薄になってしまった。
当初はリキア内で内乱を起こすものなどいないとたかをくくっていたがその読みはたった一年で崩れることになった。


ラウス候がキアラン領に侵攻したときほとんど抵抗もないまま城は陥落した。


ハウゼン候はせめてとの思いで孫娘リンディスを逃がす事に成功する。元サカ出身の彼女なら生き残ると判断したことだろう。だが、唯一の家族をなくしたくないリンディスは南部から反撃しようと試みる。


リンディスを含む四人は南部の森の片隅に隠れるように身を休ませていた。そこに赤い鎧を身に包んだ青年ケントがボロボロになりながらあるいて来た。

ケント「ケント、戻りました! 報告します。城のまわりからこの森の入り口まで、 いたる所にラウス兵が配置されていま す。その数、およそ50!」

4対50
あまりにも勝負にならない人数差だ。しかもこれは城の外にいる人数で城内を会わせれば100を確実に越えてくるはずだ。

セイン「リンディス様、本気ですか? せっかく脱出できたのに城へまた戻るなんて・・死にに行くようなもんですよ?」

変わらぬ緑の鎧を纏ったセインもいつもの口調で尋ねた。

リン「・・・城には、 おじいさまがいらっしゃる。一度は、言われるまま城の外に逃れたけれど・・このまま、ほうっておくわけにはいかないわ!!」

リンの言ったことにキアランの弓兵部隊に加わったウィルは困った表情を浮かべていた。


ウィル「しかし・・・この人数ではハウゼン様を助け出すことは難しいですね。」


一年前なら人数差を無視なメンバーがいたが今はいない。

ウィル「アイツさえいてくれれば何とか‐リン「彼の話はしないで」は、はい・・・。」

リンはあの戦いからガリアスの話題どころか名前さえ口にしなかった。さらにシルフの失踪が彼女に拍車をかけてしまった。

リン「アイツ抜きでも私達でなんとかしなきゃダメよ!!」

いない者に期待を寄せてはいけないリンの言い分も尤もだがやはり人手が足りないのも事実だ。ここでケントが口を開いた。


ケント「ラウス兵が話しているのを盗み聞いたのですが、どうやら、ラウスに攻め入ったのはエリウッド殿のようです。」

リン「エリウッドが!? なぜ、ラウスに?」
ケント「詳しい事情までは・・・。」

リンはエリウッドととは顔見知りである。そんな彼が野心からラウスに攻め込んだとは思わなかった。


ケント「それと確かなことではないそうですが噂ですがエリウッド殿の部隊の中に水使いがいてラウス兵の大半を破ったそうです。」
セイン「え、それって・・・。」

その人物に各々がある人物が浮かんだ。

フロリーナ「シルフ?」

これまで黙っていたフロリーナが口を開いた。


リン「シルフがエリウッドの所にいるならもしかしたら助けをだしてくれるもしれない。なんとか、連絡をとらないと。」

ここでウィルが手を挙げた。自ら敵陣を掻い潜ってエリウッドの所へ向かう覚悟だ。


リン「そうね・・・森では 馬は動きにくくて不利。時間はかかるけど ウィルなら身軽だし・・・。

フロリーナ「リンディスさま!」

フロリーナがリンの前に立った。


フロリーナ「私がいきます。ペガサスだったら森を越えられるから、 1番早くラウスに着けるはずです。」

リンは慌てて抗議した。

リン「フロリーナ!?あなたが一人で行動するなんて 無茶よ!!」

それでもフロリーナの心は揺るがない。

フロリーナ「ケントさんたちのおかげで私の男性恐怖症もましになってきたしエリウッドさまにはお会いしたこともあるから一人でもきっと、大丈夫です。」

エリウッドは女性に優しいしフロリーナが男性恐怖症であることも知っている。それに彼女は前よりもずっと強くなっているのも事実だ。だが、どうしてもリンは不安を隠せなかった。

リン「すごく危険なのよ・・・わかってる!?」
フロリーナ「ええ。 ・・・でも私、リンディス様のために 強くなるって決めました。もう、以前の弱虫フロリーナじゃない・・・だから、安心してまかせてください。」

ここまで言われては流石のリンも折れるしかなかった。


リン「わかったわ・・・だったら、あなたにお願いする。ただし、絶対に無理はしないこと!約束よ?」


フロリーナ「はい!では。」

フロリーナは踵を返しすぐさま天馬に乗って空高く駆け上がっていった。


リン「・・・・。」

ケント「どうかしましたか?」


リンは何やら複雑そうな顔をしていた。

リン「シルフ・・・アイツに会えたのかしら?」


小さな声で言ったつもりだが周りの者たちにはちゃんと聞こえていた。



ウィル「(やっぱりまだガリアスさんのことすきなんすね)」
セイン「(なんだかんだで他の侯爵からのお見合いを全部断っているし。)」
ケント「(もし会えたなら一発殴っておこう。)」


リンは幸せ者である。
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