死龍の軌跡

□十八章
1ページ/9ページ

フェレとラウスの真ん中に位置するサンタウルス領。そこの領主ヘルマンは気弱ではあるが平和を愛しとても温和な人柄で民からも支持をうけていた。


ヘルマン「何!?エリウッドが来たと?」

だが、今は彼の身には平穏な時間は来てなかった。

報告をした黒いコート姿に目まで隠れるフードを被った男はこう続けた。

??「はい。 今は南の丘にとどまり領地通過の許可と侯爵への謁見を希望しているとか。」

ヘルマンはこの男について殆ど知らなかった。ただ一つ知っているのはこの男がエフィデルという名であることだけだ。

ヘルマン「もしや・・・エリウッドは父親のことを
聞きにきたのであろうか?だとすれば・・・ わしは・・・なんと答えればよいのだ。」

エフィデル「知らぬ存ぜぬで通していただきましょう。」

ヘルマンの表情は暗かった。

ヘルマン「しかし・・・わしは、エリウッドを良く知っておるのじゃ。あやつの父エルバートとは古くからの友人で・・・わしには子がおらんから幼い頃より可愛がってきた。エリウッドを目の前にしてウソをつきとおす自信が・・・わしには・・・ない。」

エフィデルがフード越しに怪訝そうな表情を浮かべた。

エフィデル「・・・仕方ありませんね。では、ごろつき共を使いましょう。エリウッド殿と顔を合わせなければ、ヘルマン殿がウソをつく必要もない。」

ヘルマンは明らかに狼狽えた様子だった。

ヘルマン「! エリウッドを襲わせるというのか!?」

エフィデル「少しケガをさせ、怖い思いをしていただきます。そうすれば、フェレに逃げ帰りもう旅をしようなどと考えないはず・・・なにしろ、フェレには彼しか残されていないのですから。」

冷酷な指示を出すエフィデル。この時ヘルマンは気づいた。彼の目。ローブで顔は見えないはずなのに黄金色の瞳だけがはっきり見えた。

ヘルマン「・・・・・。」


だが今のヘルマンにはそんなことよりもこれから起こるエリウッドの悲劇に狼狽えるのだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ