死龍の軌跡
□十七章
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かつて人と竜が相争った【人竜戦役】・・・
その戦いにおいて、竜を討ち倒し人に勝利をもたらした八人の英雄がいた。
【八神将】と称えられる彼らはエレブ大陸に平和をもたらし、人々はさまざまな国に分かれながら、ゆるやかな繁栄をとげていった。
エレブ新暦979年・・・長きに渡る大陸の安定は、このまま保たれるかに見えた・・・
【八神将】が一人、勇者ローランを祖先にもつ諸侯たちの【リキア同盟】。
その中のひとつ、キアラン侯爵領。
リキアの真ん中に位置するこの地で事件が起こった。
キアランでも軍政を司る候弟ラングレンと侯爵ハウゼンの孫娘リンディスがが侯爵の座を巡って争いがおこった。激戦の末、勝者はリンディスに軍配があがった。
ただの相続争いなら何もキアランに始まったことではない。この終末には民の間である噂が流れた。
「リンディス方に属する軍師が漆黒の竜に変化しすべての兵を蹂躙した。」と・・
奇妙な噂が流れる中、更にリキアの平和を脅かす事件が起こる。
その領はフェレ領
ベルンとの国境付近に位置しながらも長らく争いとは無縁だったこの地に今、重苦しい不安の影がさしていた。
名君と称えられ、民たちに慕われていたフェレ侯爵エルバートが、配下の騎士たちと共に謎の失踪をとげたのだ。
一月たってもフェレ侯の行方は知れず、もはや、命はないものと噂されていた。
だが、その噂を嗅ぎ付け一人の少年がフェレ領に入り込んだ。
少年の名はシルフという。
シルフはたった一人の男を探すために旅をしていた。だがそれがシルフを含む多くの運命を揺るがすことになるとはまだ誰も知らない。