死龍の軌跡

□十章
1ページ/10ページ

町外れにある古ぼけた古城。昔は戦いで最大の防御を誇った城壁も最早崩れかけていた。

??「では、弟にはまんまと逃げられ一度は捕らえた姉の方も何者かに奪われた・・・そう言うことですね?」

青藍色の短い髪に藍染の魔道師の服。先程から威圧的な態度をとる女ウルスラはその前にたつ男ベアードに向けられた

ベアード「はっ・・・ 思わぬ伏兵がおりまして・・・」

鍛えられた肉体
背中に背負う大剣

ベアードもかなりの手練れだがウルスラは態度を一歳変えない

ウルスラ「言い訳はおよしなさい。 結果が全てです。」

ウルスラは魔道書を取り出し一瞬で呪文を唱えベアードの体にギリギリで火球を放った

ベアード「はっ・・・」

その額からは冷や汗が漏れていた

ウルスラ「姉弟を取り戻す策は?」

ベアード「手の者にさぐらせましたところ、 我らを阻んだ一団が姉弟をともない、こちらへ 向かっていると報告がありました。」

ウルスラ「ここに? どういうことですか?」

ベアード「この指輪が目的では ないかと・・・珍しい物だったので娘の指から抜き取っておいたのが 役に立ちましたな。これをエサに、奴らを 一網打尽にしてみせます。」

ここで初めて彼の言葉に精気を感じられた。
ウルスラはを閉じた

ウルスラ「わかりました。・・・少しだけ時間を あげましょう。私は、これから別の任務をこなし それからここに戻ります。刻限は、明日の夜明け ・・・いいですね?」

ベアード「はっ・・・」

ウルスラ「私が戻った時に 姉弟がいなかったら・・・この手で【牙】の制裁を 下すことになります。よく覚えておきなさい。」

ベアードが動き出したときウルスラは既にいなかった

ベアード「・・・・・・」

ベアードは暫く何も話せなかった












古城の外で

ウルスラ「【音無】」

??「タナトスだ。名前で呼べ」

男の周りには音が無かった。風に擦れる草の音さえも無かった。

ウルスラ「万が一のことが有ります。奴等に加担して姉弟を捕らえなさい」

タナトス「俺の仕事は暗殺だ・・」

いつの間にか彼の右手にはサイコロが握られていた。そして投げた目は

タナトス「1・・チッ、つまんねぇ・・」

ウルスラ「タナト・・!!」

ここに来てウルスラが初めて声を荒げたと思いきや彼女の首筋には金色に光った短剣があてられた

タナトス「俺に指図するな・・今日は一人殺して終わりだ」

音がしない。彼の周りには音がしない。

タナトス「あーあ、つまんね」

ウルスラの返事はない。彼女は一瞬で消えていた。

だが、それはタナトスも同じ。彼も初めから誰もいなかったかのように姿を消した。


風の音がした
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ