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□第二夜*料理人
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料理人

目を覚ますと、僕はまだあのホテルにいた。
ふと目をやればどす黒い染みは消えている。

「お目覚めか?」

昨日の少年ではない声に顔を向ければ、シェフらしき服装の少年がテーブルに朝食をセッティングしていた。

「あの、」
「万丈目さん、だ。なんだ、翔。リクエストならもう手遅れだぞ」

見ると僕の好物ばっかりだった。驚く僕に満足げに笑い、「さあ食え」と少年、万丈目君は言う。

「気を付けろよ?翔。万丈目はお残しに厳しいぜ?」
「あ、君は・・」
「−なんだ。ヨハン、貴様は翔の食事時間にはその顔を出すんじゃない」
「ほら、こうやって殺意むき出しで料理の一部にされちまうぜ?早く食べちゃえよ」

ヨハン。彼はそういう名前だったんだ。
促されるまま椅子に座り、料理を口に運ぶ。すると―何かと目があった。人の、眼球…?

「っ」
「この俺様が腕によりをかけて作ったんだ、味わってくえよ?」

自慢げな顔のまま、こともなげに万丈目君が僕の止まった手に手を重ね再び口へ近づかせる。
食べてしまう恐怖よりヨハン君の言葉の恐怖が勝って、僕は震える口を開いた。

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