石神 平安絵巻・一

□石神中納言
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崩れ平安時代物です。
本来の設定でないとイヤな方はご遠慮下さい。m(_ _)m


石神…中流貴族で学者。あるきっかけで出世の道へ!?


侑紀内親王…平泉帝の皇女、昴親王の異母妹


昴親王…侑紀の異母兄。石神の教え子。


みどり…侑紀の侍女で幼なじみ。





石神家は代々、漢詩や史学を教える「文章博士」、学者の家である。皇族の家庭教師をしたりもするが、地位は決して高くない。



石神「……本日はここまで。次回は…」


昴「あー、かったり―!お前さぁ、もう少し、眠くならない教え方できねぇの?」



石神「……昴様、興味を持ってお聞きになれば、眠くなる事など無い筈です。だいたい、貴方は…」


昴「あー、やべぇ、始まった…」



今にも、天下無敵と噂される、石神の説教が始まろうとしたその時。
昴の背後にある几帳(布製の間仕切り)の後ろから、小さな手が現れ、昴の衣の袖を引っ張る。



昴「あー、分かったって。…悪い、石神、今からオヤジ…帝の所に行ってくれ。石神に頼みがあるってさ。」



石神「ほぅ、そうですか…では、この話の続きも次回にしましょう。…失礼。」


帝のお召しとあれば仕方ない。石神は、次こそ昴親王に説教しなければ、と思いつつ退出し、帝の御殿に移動した。




平泉帝「おぉ、来たか。実は、頼みがあってね。引き受けてくれるなら、君を中納言にしようと思う。」



石神「えっ?いきなり中納言ですか?…どのような事でしょう?」

文章博士→中納言!?一体、何段階飛び越しになる?
どんな無理難題なのか?



平泉帝「姫宮に…、侑紀に学問を教えてやって欲しい。」


石神「は?私が侑紀内親王様に、ですか?」


平泉帝「侑紀がどうしても、漢詩と日本紀を直接習いたいと言い出して。紫式部でもない限り、教えられる女性はいない。男性が、となると…よほど信頼できる者でないと。
引き受けてくれるかね?」



石神「はっ、主上のご命令とあれば。なにぶん、女性は余り得意ではありませんので…。」

平泉帝「ははは、だからだよ。…早速、頼んだよ。」


石神「はぁ……。」




さっそく、侑紀内親王の屋敷に向かう。


几帳を隔て、尚且つ距離を置いて、内親王と向き合う。決して顔を合わせることの無い講義になるだろう。



侑紀「はじめまして、侑紀です。よろしくお願いしますね、石神さん。」


若々しくて、よく通る声だ。それにしても、いきなり石神さん、とは。



石神「はい……姫宮様、漢詩は、白氏文集からで宜しいですか?」


侑紀「あの、石神さん、侑紀って呼んで下さい。それから、もっと近くでお話ししてくれませんか?
兄の後ろで聞くことに慣れてましたから。」


石神「はぁ……。」

控えている侍女にも促され、几帳のそばまで近づく。
彼女は、昴様の後ろで、十二単という大量の絹布の塊に埋もれ、講義を聞いていたらしい。
男の学問に手を出すとは型破りな。母君を早く亡くされたとはいえ、誰がこんなふうに育てたんだか。


と、その時。



みどり「あ〜、小萩、小梅、そっち行っちゃダメ〜〜!」


『ふみゃ〜』

『にゃ〜ん』


二匹の子猫が追いかけっこしながら入ってきて、几帳に飛び込む。


みどり「あ〜〜っ!」

几帳と燭台が侑紀側に倒れていく。


石神「危ないっ!」

石神は、咄嗟に几帳をはね除け、燭台の足を掴む。


侑紀「きゃっ!」


石神「侑紀様、大丈夫ですか?」

思わず彼女の方を見てしまう。


侑紀「あ、ありがとう…ございます。」


目が合った。


「「……!!」」


顔を見てしまった。しかも、至近距離で。高貴な女性は男性に姿を見せてはならない。見るのは、契りを結ぶ相手のみ。


石神「す、すみません…!」


侑紀「いえ、私こそ……//////」


気まずい……。



石神「今日はとりあえず、顔合わせ…あ、いや、ご挨拶ということで…、失礼します」


侑紀「そ、そうですね。では、日を改めて…。」


石神は、慌てて退出した。

(やれやれ…、しかし、あの生き生きした丸い瞳。日の光と無縁の白い頬が一気に朱に染まる様。艶のある小さな唇……ん?いかん、いかん、忘れなくては。)

石神は、強く首を振った。




一方、侑紀内親王邸では。



みどり「申し訳ありませんでした。…それにしても、随分堅物で恐そうな感じの先生ですね。大丈夫なんですか?」



侑紀「石神さん、いいな…/////」



みどり「えぇ――っ!?」



侑紀様、勉強ははかどるのだろうか……?
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