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□無防備
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───無防備
「…わからない」
ノートと睨めっこをしていたハルが、ふぅ…と長い息を吐くと、そのまま机に伏せてしまった。
「こーら、ハル。どこがわからないの?教えてあげるから起きて」
唸り声を上げて顔を上げた遙は、「ここ」と、わからない問題を指差した。
俺たちは、所謂勉強会というものをしていた。
今日はハルが俺の家に泊まりに来ることになっていて、ついでだから勉強でもしよっか、と提案したのだ。
ハルは頭が悪いわけではない。話を聞いていればそれなりに良い点数は取れるはずだ。でもハルは授業中、あまり話を聞いていない。興味が持てないのだろう。
「ここは、まずこの公式を使って…」
なるべく分かりやすいように説明しているが、ハルは睡魔と戦っているのか、頷きながら時々カクっと落ちている。
「ハル、眠たい?」
「別に眠くない……」
そう言ってるハルの声はとても眠そうだ。
このまま勉強を続けてもはっきり言って意味はないだろう。
俺はハルを寝かせることにした。
眠くないなどと言っていたのが嘘かのように、規則正しい呼吸を繰り返すハルの瞳は閉ざされていた。
ハルの寝顔は、とても可愛くて、好きだ。
幸せそうに眠るハルは、今頃水か鯖の夢でも見ていることだろう。
「ハルは俺の事、男として意識なんてしてないんだろうなぁ…」
そう呟きながらハルのサラサラな黒髪を撫でる。
「そんな無防備な可愛い顔してると、怖いシャチさんに食べられちゃうぞー……なんて」
そんなこと、出来るわけがない。
俺は今まで、ハルをおかずに何度も抜いてきた。
最低なことをしている自覚は十分にある。
でも、ハルが俺に抱かれて、快楽に溺れる姿を想像すると、どうしても反応してしまう。
我ながら立派な男子高校生だと思う。
「おやすみ、ハル」
このまま寝顔を眺めていると、本当に最低なことをしてしまいそうになるから、床に布団を敷き、電気を消して布団に入った。
いつもなら俺のベットで2人並んで寝ていたが、今は正直危ない。今一緒に寝てしまったら、この関係性が崩れてしまう。そんな気がした。
「おやすみ」
もう1度そう告げると、俺もすぐに深い眠りへと入っていった。