橙少女と戦士たち

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「それでは両者準備が出来た所で試合を開始致します。 3、2、1…GO!!」

マスターハンドの合図と共に、二人が勢いよく地面を蹴る。

まず先制したのは、マリオの方だった。
右足を軸にして、その勢いで全体重を掛けた拳を振りかぶる。

それを避けたリンクが、今度はこちらだと言わんばかりに剣を思い切り横向きに押し出した。

拳と剣が、勢いよく音を立ててぶつかる。
狭まる間合い、そして交わる二つの双眸(そうぼう)。
まるで炎の様に燃えたぎったお互いの闘志が、こちらまで伝わってきそうだ。

二人の戦士の鍔迫り合いに、会場が一気に静まりかえる。
数秒間、どちらも圧される事なくそれは続いていたが。
闘っている彼等は言葉を交わすことなく、目の合図のみで離れた。

まずは仕切り直し、という事だろう。

「ふぅん……リンクも今回はやるわね」

隣のピーチが関心したかのように呟いた。
確かに彼等二人はかなりの猛者なのだが。
橙乃にはどちらも容易に予測できる動きだった。
未来予測に長けている彼女にとって、この程度の戦術は地にも満たない。
まあ、会場の熱気を誘うには打ってつけではあるが、というのが橙乃の感想であった。





「ああっ、そんな……」
ピーチの声に再び戦場を見ると、マリオがリンクに蹴り飛ばされた後だった。
惜しくも攻撃を避けられなかったのか、はたまた自爆したか。
それは定かではない。
だが、彼が圧されているのは明らかだった。

「リーンク! リーンク!」

それと同時に、観客席が沸き起こる。
名を呼ばれた勇者は、高々と剣を彼に、止めを刺すように降り下ろした。

大きな爆発音に、巻き上がる砂埃。

その瞬間……

勢いよく光が炸裂し、再び轟音が戦場を包んだ。
観客席まで飛び散る破片に、悲鳴を上げる者たちまでいる。


爆風と煙が晴れ、最終的に立っていたのは。


_____赤帽子の髭男、マリオだった。
辺りには、爆発させたとされる弾薬の亡骸が散乱している。
そして彼の傍らには、フィギュアと化したリンクの姿。

「激しい闘いを制し、栄えある勝者はマリオ! 皆様、闘いを終えた彼等に拍手でお送り下さい!」


戦場に惜しみ無い拍手が送られ、今回の試合は幕を下ろした。
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