橙少女と戦士たち

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橙乃が案内されたのは、スタジアムの最奥にある席だった。
他の客席とは違いこの区域は他よりも尖出しており、眺めが一段と良い。

「あら、そろそろ始まるみたいね」

『そうだな』

革張りの椅子に腰を降ろす。
周りにも他のファイター達がいるようで、橙乃に先程声を掛けた針鼠も緑色の恐竜と一緒に座っていた。

暫くしていると客席が一気にざわめき出す。
恐らく、もう試合が始まるのだろう。
それを合図に、選手入場のファンファーレが高らかに鳴り響いた。

まるで待っていたかのように、スタジアムに轟く歓声。

観客たちは拍手をしたり、口笛を吹いて、二人の選手の入場を喜んだ。

「来たわっ。マリオ、頑張って!」

隣のピーチはお目当ての選手がいるようで、上ずった声で歓声を上げていた。
しかし、そんな彼等とは明らかに違う態度の者が一人。
黙ったままの橙乃は、選手の事などどうでもいいという表情で、砂埃立つ戦場へと目を向けた。

「それでは皆さんお待たせ致しました。私、マスターハンドが選手紹介をさせて頂きます」

どうやら試合の設置だけでなく司会も彼が執り行うようで。
あいつも以外と忙しいんだな、と橙乃は何となく思う。

「まずはこちらから。みんなの憧れるスーパースター! 土管掃除から悪者退治まで何でもこなせる配管工……マリオ!」

右側に立っている赤帽子の髭男が、客席に向かって手を振った。

「そして、こちらはかのハイラル王国伝説の勇者! トライフォースの力を宿したその身で如何なる悪をも打ち砕くッ! その名は……リンク!」

そこにいたのは、先日橙乃を案内した青年。
沸き上がる歓声を背に、剣を高々と振り上げた。

「次回が予選の為、今回はこの二人のみでの試合となります。それでは両選手、準備をして下さい」


これから、彼らの闘いが始まる。
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