橙少女と戦士たち

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「Hey,girl! 君が新しいファイターかい?」

『……そうだが』

「そうか。じゃあ今度の予選、運が良かったら会おうぜ!」

『……どうも』

資料室へと向かう途中、喋る針鼠に話し掛けられた。
先日、それよりも有り得ない物(喋る白い手)を見ていた為珍しい気は起きないが。
それより今日で、話し掛けられた回数が新記録を更新しつつある事に気付いた。

ざっと数えて、三十五回。
最早呆れる所を一周廻って驚くくらいである。

こんな仕打ちに会うのはどう見ても物好きのマスターハンドが関わっているとしか考えられない。

朝、眠い目を擦って食堂室に入ったら大量のクラッカーを同時に鳴らされ。

やっと鳴りやんだかと思えば赤帽子の髭男やら緑色の恐竜やら桃色の球体やらに囲まれ。

食事もままならない状態になったのは今日が初めてだ。
もうこのような事が起こるのは二度と無いのだと信じたい。

しかし、切実な橙乃の願いは突然話し掛けてきたピーチによって掻き消されてしまうのであった。
それはもう、爽やかな笑顔で。

「ねえミサキ、これから私と一緒に試合観戦でもどうかしら?」

試合。それは当然、大乱闘の事だろう。
実を言えば一刻も早く断りたい所なのだが、朝っぱらから時間を阻害されてきたのだ。
今日という日が続く限り橙乃に話し掛けてくる者は腐る程いるだろう。
それならば、最早どうにでもなれ、と諦め半分に答えた。

『……ああ、良いかもな』

「嬉しいわ。では、行きましょうか」


こうして、橙乃の予定はまた狂っていく。
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