橙少女と戦士たち

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この森は一体何処まで続くのだろうか。
青々とした葉が生い茂り、時折鳥の囀(さえず)りが聞こえるこの道を、かれこれ二時間は歩き続けている。


『……重い』
しかめっ面で片手にキャリーバッグを引く少女――橙乃ミサキは正に不機嫌であった。

いや、比較的いつもそうなのだが。
今回はこれまでの中で最悪に匹敵するものだろう。


それもその筈だ。
家中ありったけの荷物を詰め込んだ橙乃のキャリーバッグははち切れんばかりに膨らみ、最早球体と化している。
それに加え、いくら歩いても変わらないこの景色。そしてこの距離。
真っ直ぐ歩いて来るだけでいい≠ニ言われたものの、これではいつまで経っても着く事は無いのではないか、と思う程だ。

普段電車やバスを利用する橙乃にとってこれほど面倒なものはない。


―――全く、いつになったら着くのだろうな。

鬱蒼とした緑と手の負担に底知れない不快感を覚えながら、橙乃ミサキは本日二度目の舌打ちをした。

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