□清純と嫉妬
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やば。これから、どうしよ。

はっと気付いた時には俺は彼女を壁に追い込んで無言で圧をかけていた。ここまできてそれはないだろって感じだけど本当に、こんなことするつもりはなかったんだ。こんな、白昼堂々彼女を襲いそうなことするつもりは。

「き、清純君…」

そんな困惑したような上目遣いで見上げられたらめちゃくちゃに掻き抱いてしまいたくなる。それに、その真っ赤に染まった頬。手の平で柔らかく包んでその温かさを楽しんだ後唇を寄せてもっともっと耳まで赤くさせたくなる。だけどそれは今すべきことじゃなく。
謝るべきか、このまま押し切るべきか。

「あの、ごめんなさい…何だか、怒ってるよね…?」

ああ、もう。■■は悪くないんだよ。悪いのは俺なんだ。君を独り占めして誰にも触れさせたくない我儘な俺。
■■は誰にでも優しいから男女問わずみんなに好かれてる。だからたくさん感謝されることもあるし、それに共学なんだから男の子だって気さくに話したり触ったりすることもあるし。思い出したらやっぱりむかむかしてきた。あいつ、俺が■■と付き合ってるって知っててわざと手なんか握ったんじゃないだろうか。■■が親切にしてくれて嬉しかったからつい、みたいにしてたけど。
…だけどやっぱり■■は悪くないよな。■■のそういう優しいとこに惚れたのは俺なんだし。

「…ごめん」

やっとの思いで唇からそれだけを言って、びくびくしている■■の手を両手で包み込む。細い指が細かく震えていた。

「さっき男子に手、握られてただろ?俺、それが何だか嫌で…」

今まで■■もこんな気持ちになってたかな。俺が他の女の子と話したり触れたりしたらもやもやしてたのかな。もしそうなってくれてたら、その嫌な気持ちを全く表さない■■ってすごいよ。俺、もう二度と他の子見たりしない。だから、■■も…。なんて、言う権利ないけど。

「もしかして、嫉妬してくれたの?」

さっきまでの怯えた表情は消え、■■はそう言ってほんの少し嬉しそうに笑う。俺が小さく頷くと彼女は俺の胸の辺りにとん、と頭を軽くぶつけてきた。

「だったら、あのまま怒ってくれてもよかったのに…嬉しいから」

遠くでチャイムの音が聞こえる。ちゃんと授業に出るなら、すぐにこの手を離して彼女に「何を言ってるんだよ、でも怖がらせてごめんね」とかなんとか言って教室に戻らなきゃいけない。
…だけど俺がそんな優等生みたいに出来る訳ないじゃないか。

「じゃあ、怒る。もう、他の男に髪の毛一本だって触れさせないで。君は全部俺のものなんだからね」

離した手はそのまま彼女の華奢な背中に回して抱き寄せる。何度も何度も愛してるって言って、心を縛って、俺だけの■■だって教え込ませてあげなきゃいけない。
前言撤回。■■は悪い子、だから。

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