高黒
□[12]合宿3日目E*shield*
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赤司は感情の見えない瞳で高尾と黒子を見下ろし、黒子に向かって手をさしのべる。
「テツヤ。そこを離れて、こっちにおいで」
「……嫌です」
背中に高尾を庇うようにして、少し体をずらす。
その際、まだ完全に退けきっていなかった看板が痛めた部分に当たったのか、高尾が小さく「いっ……つ……」と唸った。
「和君!?」
「あーごめん、大丈夫。ちょいぶつかったとこ当たっただけだから」
何でもないと誤魔化すが、黒子は右腕を取ってその場所を見ると、赤く痣になっていた。
「……っ!」
「ちょ、待って待ってテッちゃん、ほんとに大丈夫だから、」
今にも泣きそうに顔を歪める黒子に、高尾が慌ててその顔を覗きこむと。
「ああもうとりあえず落ち着けよお前ら」
がたん、と音がしたと思えばいつの間に取りに行ったのか宮地が救急箱を開けていて。
「おら高尾、先輩様が手当してやる、腕出せ」
「あざーっす」
「黒子、お前は湿布止めるテープ切って、包帯出しとけ」
「はい」
普段と変わらない宮地の様子。
大坪や木村だって黒子の恋人が高尾と知って驚いたのに、宮地はまるで驚いた風ではなくて。
高尾や黒子も、そんな宮地を不思議に思う事なく普通に接している。
「宮地……?お前、もしかして知ってたのか?」
「知ってたけど?」
呆然とする大坪にしれっと答えて、宮地は高尾の腕の手当を続ける。
「最初から知ってた訳じゃねえけどな。でもお前らだって本当は分かってんだろ」
お前ら、で赤司達と誠凛メンバーを視界に入れて。
「そんだけ総出で探しても見つからない以上、こいつらにも「協力者」がいるって事」
隣にいる伊月も「協力者」だと、さっき高尾に聞いたので宮地も知っている。
それでも、伊月ともちろん黄瀬もそうである事は言わない。
何も言わずに黙って話を聞いている赤司が、何を考えているのか分からないから。
「他は?痛えとこねえか」
「大丈夫っす」
湿布を貼って一旦高尾を見ると、湿布の冷たさに一瞬眉をしかめた顔は湿布がずれないようにと慎重にテープで止め包帯を巻く黒子にふと笑みを漏らした。
「ありがと、テッちゃん」
頭を撫でると、心配げな表情は崩さないまま少しだけ笑う。
そんな表情に高尾が笑顔を返すと、赤司の「へぇ」と言う冷たい声がする。
「そんなテツヤの表情に絆されて、僕らを欺いている人間は他にもいるという事か」