高黒
□[11]合宿3日目D*catch*
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バーベキューの盛り上がりも下火になりつつある頃、火神は冷たい冷たい地面に正座させられていた。
「海常の笠松さん」
「知らねえ」
「小堀さん」
「知らねえ」
「森山さん」
「知らねえ」
「早川さん」
「知らねえ」
「まさかの中村さん」
「知らねえ。つか誰だ」
「WC準決できーちゃ……黄瀬君に代わって出た選手よ」
「知らねえっつの」
淡々と他校のレギュラー名を言う桃井と、その隣で火神をじっと見ているリコ。
「じゃあ秀徳の大坪さん」
「知らねえ」
「まさかの木村さん」
「知らねえ」
「うちの桜井君」
「知らねえ」
「若松さん」
「知らねえ」
「諏佐さん」
「だから知らねえって!」
(ごめん火神っち、助けらんないけど頑張って!黒子っちからの信頼失わないために!)
表面はポーカーフェイスで隠しておきながら、内心では黄瀬も冷や汗ものだ。
隣を見れば、緑間、赤司、紫原、青峰の横顔。
事の起こりは、15分ほど前に遡る。
「さて、皆も知っての通り明日で合宿が終わるわけだが、思いの外テツヤのガードが堅くて未だどの学校の奴なのかすら検討が付いていない」
「徹底してやがるもんな、テツの奴」
合宿中格段に仲のよくなった他校生に囲まれて、黒子が見せる笑顔に癒されながらも、その話し合いはひっそりと続けられていた。
「いっその事、かがみんあたりに直接聞いてみない?本当に知らないかどうか」
「なぜ火神なのだよ」
「だって相棒だよ?彼だけにはテツ君教えてそうじゃない?」
「どうっスかねぇ。黒子っち警戒心強いから、誰にも教えてないと思うけど」
「んー、俺も黄瀬ちんとどうかーん」
この時、紫原が同意してくれたのは黄瀬にとって有り難かった。
赤司は意外にも、紫原の意見は聞き入れやすいから。
「ふむ、それもそうか」
けれど、予測不能な事は時として不意に訪れるもので。
「そう?ストレートに聞けば、もしかして知ってる場合あっさりとボロ出してくれるかもだよ」
(もっ……)
「それも言えるな。桃井、とりあえずその手を使って火神をここに呼んできてくれ」
「りょーかいっ!」
(桃ーーーっちぃぃぃー!)
けして表に出せない黄瀬のそんな心の叫びが届くはずもなく(届いたら届いたで困るが)。
桃井に「ねえ、本当は知ってるんじゃないの?テツ君の恋人」と聞かれ、不意打ちだったからか火神が馬鹿正直に「知ってます」と言わんばかりに動揺し。