高黒

□[11]合宿3日目D*catch*
1ページ/4ページ



バーベキューの盛り上がりも下火になりつつある頃、火神は冷たい冷たい地面に正座させられていた。

「海常の笠松さん」

「知らねえ」

「小堀さん」

「知らねえ」

「森山さん」

「知らねえ」

「早川さん」

「知らねえ」

「まさかの中村さん」

「知らねえ。つか誰だ」

「WC準決できーちゃ……黄瀬君に代わって出た選手よ」

「知らねえっつの」

淡々と他校のレギュラー名を言う桃井と、その隣で火神をじっと見ているリコ。

「じゃあ秀徳の大坪さん」

「知らねえ」

「まさかの木村さん」

「知らねえ」

「うちの桜井君」

「知らねえ」

「若松さん」

「知らねえ」

「諏佐さん」

「だから知らねえって!」

(ごめん火神っち、助けらんないけど頑張って!黒子っちからの信頼失わないために!)

表面はポーカーフェイスで隠しておきながら、内心では黄瀬も冷や汗ものだ。

隣を見れば、緑間、赤司、紫原、青峰の横顔。



事の起こりは、15分ほど前に遡る。

「さて、皆も知っての通り明日で合宿が終わるわけだが、思いの外テツヤのガードが堅くて未だどの学校の奴なのかすら検討が付いていない」

「徹底してやがるもんな、テツの奴」

合宿中格段に仲のよくなった他校生に囲まれて、黒子が見せる笑顔に癒されながらも、その話し合いはひっそりと続けられていた。

「いっその事、かがみんあたりに直接聞いてみない?本当に知らないかどうか」

「なぜ火神なのだよ」

「だって相棒だよ?彼だけにはテツ君教えてそうじゃない?」

「どうっスかねぇ。黒子っち警戒心強いから、誰にも教えてないと思うけど」

「んー、俺も黄瀬ちんとどうかーん」

この時、紫原が同意してくれたのは黄瀬にとって有り難かった。

赤司は意外にも、紫原の意見は聞き入れやすいから。

「ふむ、それもそうか」

けれど、予測不能な事は時として不意に訪れるもので。

「そう?ストレートに聞けば、もしかして知ってる場合あっさりとボロ出してくれるかもだよ」

(もっ……)

「それも言えるな。桃井、とりあえずその手を使って火神をここに呼んできてくれ」

「りょーかいっ!」

(桃ーーーっちぃぃぃー!)

けして表に出せない黄瀬のそんな心の叫びが届くはずもなく(届いたら届いたで困るが)。

桃井に「ねえ、本当は知ってるんじゃないの?テツ君の恋人」と聞かれ、不意打ちだったからか火神が馬鹿正直に「知ってます」と言わんばかりに動揺し。


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ