高黒

□[8]視線の瞬間ーmomentー
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高尾に指輪をもらって3日目の朝。

まだ起きそうにない黄瀬の髪を小さな子供にするように優しく撫でて、黒子はベッドを降りカーテンを開く。

朝日に指をかざすと、きらきらと光る指輪。

指輪を見るたび、幸せな気持ちになる。

それと同時に、切なくもなる。

いずれ自分は未来に帰る。
そうなると、もう二度と高尾には会えなくなる。

『テッちゃん』

自分の名前を呼んで笑うその笑顔を、もう見れなくなるのだ。

(……まずいかも、しれません)

これ以上一緒にいたら、元の時代に帰りたくないと思ってしまうかもしれない。

けれど、早く帰った方がいいのかもしれないと思うと、高尾と会えなくなるのは嫌だと思ってしまう。

悪循環だ。

「んう……くろこっち?」

声がして後ろを振り向くと、眠そうに目をこすりながら黄瀬が起き上がった。

「起きましたか黄瀬君。おはようございます」

「おはよーっす……」

起き抜けの黄瀬はいつも舌っ足らずで、何とか起きようとする頭もグラグラと揺れている。

「下に降りて顔を洗いましょうか。そして、紫原君が作ってくれてる朝ご飯を食べましょう」

「たべるっすー……おなかすいた」

「…………」

(この可愛い生き物は本当に19歳なんでしょうか)

目をこすりながら大きくあくびをしてきゅるるとお腹を鳴らす黄瀬に対してそんな事を(真剣に)思いながら、黒子は未だ動きの遅い黄瀬の背中を押して部屋を出る。

黄瀬の背中に手を添えた事で目の前に来た指輪にやっぱり高尾の笑顔が浮かんでしまって、少し苦笑した。






「テッちゃん、おはよー」

高尾の明るい声に、黒子は読んでいた本から顔を上げて笑う。

「おはようございます、高尾君」

「あ、高尾君来た!今日私と日直なんだけど、先生がちょっと来てって」

「おー。テッちゃん、ちょい行ってくるな」

「はい」

黒子ににこりと笑って、頬をさらりと撫で高尾は教室を出ていく。

それを見送って、クラスメイトが1人近付いてきた。

「黒子、これやる」

クラスメイトが黒子に差し出したのは、1枚の封筒。

「何ですか?」

「ほら、お前が朝職員室呼ばれた日。教室に戻ってきた黒子と入れ違いで、俺が緑間から逃げてたの知ってる?」

「ああはい。高尾君から、無理矢理写真撮ったら緑間君がキレたと聞いてます」

「いや、そもそもの原因はお前のその旦那なんだけどな」


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