高黒
□[6]親愛の誘因ーoccasionー
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データのパスワードに繋がるヒントは見つからないまま、高尾に真実を話して1週間が経ったある日。
「ねえ、離して。俺行かなきゃ」
「やだ、置いてかないで!」
「もうすぐで黒ちんも高ちん連れて帰ってくるはずだし、それまでの辛抱。ね?」
「無理っス、嫌っス、紫っちと一緒行くっス!」
「連れてくとまた騒ぎになるじゃん。走るのとか疲れるし」
「えーと……何やってんの?」
高尾の目の前で繰り広げられているのはメロドラマで使われそうな、去りゆく男と追いすがる女の1シーンのようだ。
その対象が、どちらとも長身で見目のいい男だという事を除けば。
「あー、高ちんいいとこに来た。ちょっと黄瀬ちん預かってくんない?てか黒ちんは?」
「用があるからって真ちゃんに拉致られた。で?その状況は何なわけ?」
「買い物行きたいんだけど黄瀬ちんが離してくんなくて」
紫原とは、案外仲良くなった。
黄瀬は、高尾が黒子を「テッちゃん」と呼んでるからと「黒子っちとお揃いがいい!」と言い出したので、仕方なく「涼ちゃん」と呼んでいる。
「連れてきゃいいじゃん」
「この前黄瀬ちんと行った時、高ちんも間違えたこの時代にいる黄瀬ちんそっくりのモデルだかなんだかに間違われて追いかけられて、逃げてるうちにはぐれるし黄瀬ちん迷子になって1人が嫌すぎてパニクるしで大変だったんだから。赤ちんが」
「ほんと1人になんの苦手なんだな。ん?何で赤司が大変だったんだ?」
「黄瀬ちん家に帰すために色々ね」
「何したんだよ」
「赤ちんだからいいの。痕跡ゼロ。並の奴ならすぐアシが着く」
「こえーよ!マジで何したんだよ!」
黄瀬の肩に手を置けば紫原から今度は自分に抱きついてこられて、「テッちゃん専用なんですケド」と頭をべしりと叩く。
「で、その赤司はどうしたんだよ。いないのか」
「電気屋に買い物行ってる。色々買いたいものがあるんだって。すぐ帰るって言ってたんだけど」
「買いたいもの?」
「記録用のdisk関係とか、普通に広告に製品として出てるの見て歓喜で内臓から震え上がったみたいだから、珍しくテンションマックスで出てった」
「それこの時代の主流なんだけど、お前らの時代にはもうねえのか。つか赤司、内臓からってどんだけだよ」
「あるにはあるけど、対応してるやつ持ってるの赤ちん含めて多分数えるほどしかいないと思う。ま、そゆ事で黄瀬ちんの子守おねがーい」