高黒
□[1]写真の笑顔ーsmileー
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「頼む。ずっと一緒にいてくれ」
お前がそれを望むなら、俺は喜んでそうしよう。
「ごめんな」
謝る必要などない。
お前の力になるために俺はいるんだ。
俺にとってお前は、'絶対'なのだから。
言葉の記憶ーmemoryー
「真ちゃん真ちゃん、聞いた!?」
教室に入るなり、高尾にテンション高く絡まれて緑間は眉をしかめる。
「何をなのだよ」
「今日!うちのクラスに転校生来んだって!可愛い女の子ならいいなぁ」
「興味がない」
妄想する高尾を横目で見て、緑間は自分の席に着く。
「興味はないが情報はある。期待を打ち砕いて悪いが高尾、転校生は男だ」
「……マジで?」
「顔を見、声を聞いた。中性的ではあるが男と分かる顔つきをしているし、学ランを着ていたし声も低い」
「なぁんだ」
緑間の言葉に、高尾を始め男子の大部分ががっかりしてため息をついたが、今度はそれを聞いていた女子が「中性的=それなりにイケメン」の方式を即座に組み立ててきゃあと小さな歓声を上げた。
「ついでに言うと、臨時だそうだ。家族の都合で短くて2、3ヶ月。長くても半年でまた転校するらしい」
「何それ。そんな短いんだったら、今までいたとこにいてよかったんじゃないの。次どこ行くのか知らないけどさ」
「置いていくのは心配だったんじゃないのか。だからと言って学校に行かせないわけにもいかないしな」
「心配ってどこの箱入り坊ちゃんだよ。前どこいたの」
「アメリカなのだよ」
「……そりゃ置いてくのは心配だな」
ちょうど予鈴が鳴り、話は終わったとばかりに前の席に座る緑間の背中を見て、高尾は机にひじを突く。
この時は、何も変わらない1日が、何の変化も起こらない日常が続くと思っていた。
そう。
「黒子 テツヤです。よろしくお願いします」
透き通りそうなほどに綺麗な水色の髪に水色の瞳、色白で男にしては小柄ではあるけれど感情の見えない表情はそれでも意志が強そうな、転校生が来るまでは。
(ふうん、変わった毛色だけど……ん?)
転校生と、目があった。
目があったどころで済む話ではない。
何故か、じっとガン見されている。
(何だ?)
やはり感情の見えない瞳。
そもそも、自分達は初対面のはず。いくら記憶を辿っても、こんな珍しい色の人物に会った覚えはない。
ゆえに、何故見られているのか理由が分からない。