11月と10月のお話

□[5]味方
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隼さんはいつも笑顔で、感情を表に出す事はあまりなくて。

怒ったり、注意したりするのは海さんの役目で。

だけど今目の前にいる隼さんは、明らかに怒りを露わにしていて。

「答えなよ。どこの男にもらったの」

「何でっ、男からだって、断定してるんですかっ……」

「何となく?でももらった事は否定しなかったね、誰からもらったの?」

「誰でも、いいでしょ……つっ……!」

近づいてきた隼さんの唇を避けようと顔を背けたら、そのまま俺の首筋に降りてく吸い上げた。

衣装にギリギリ隠れる、計算された位置。

「ねえ、郁。何で僕が珍しくもこんなに怒ってるのか、見当つかないわけじゃないよね。なのに、何でそんなに偉そうなの?」

「偉そうになんてっ……いいから離してください!」

「離さないよ。絶対に、離さない」

早く、早く誰か。

誰でもいいから、今ならまだ間に合うから、隼さんを止めて。

隼さんを助けて。

「もしかして誰か助けてくれるのを待ってたりする?そんなの無駄だよ、よく考えれば分かる。郁はどうして、ここに来たの?」

「スタッフさん、がっ……場所と、時間が変わったってっ……」

「それを聞いたのは郁だけ?」

「は、い……控え室にいた涙と陽は、呼ばれたからってAスタジオに行ってて……」

「はいおりこうさん。そういう事だよ」

撫で撫で、と頭を撫でられたけどいまいちよく分からない。

「な、に……?」

「つまりね」

全部嘘って事。

なんて言って、俺が大好きな笑顔を見せて。

「収録場所も時間も変わってないから、もうここには誰も来ない。僕の言葉じゃ郁は来てくれないと思ったから、適当にスタッフ捕まえて控え室から邪魔者追い出してそれから郁だけここに来るように仕向けた。出来れば働きたくない僕にしては結構労力使ったんだから」

手を拘束している隼さんの力が、だんだん強くなる。

「痛いっ……」


「この周辺にはほとんど誰も来ないし、邪魔者は入らないよ」

ふわりと表情を崩す優しい笑顔に……前は大好きだった笑顔に、めまいを感じた。

「だからさ、もう逃げられないんだからおとなしくしてなよ。怪我させたくはないしね」

「やだっ……やだっ!」

どうにかして抜け出さなきゃ。これ以上隼さんと2人きり一緒にいたらっ……。

「……ちっ」

聞き慣れないそれに、反応が遅れた。

隼さんの舌打ち。


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