黄黒
□[3]重なる笑顔、響く誰かの声
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その日以降、黄瀬はあの夢は見なくなったと黒子に言った。
皆に話を聞いてもらって、涙を無理に止めずに黒子に抱きしめてもらったからだと、ありがとうと笑った黄瀬の表情に曇りはなかったから、心配させないための強がりではなく本当に見なくなったんだろう。
それから黄瀬は少し落ち着いたようだった。
ここ最近では黒子と一緒に寝る時も抱きしめるだけで落ち着くらしく、ベッドに横になり黒子を抱き込むとすぐ眠りに落ちてしまう。
なので、当然の如くアッチの方はご無沙汰なわけだが、温もりを感じるだけで眠りに落ちるほど自分の存在に安心してくれているんだと思うと、無理に誘う事も出来ないししたくない。
「黄瀬ちん起きないねー。お菓子のにおいかがせたら起きるかな」
「やめろ敦、疲れているんだよ。着くまで寝かせてやれ」
「赤司の言う通りなのだよ。向こうについてもなお眠そうにしていたら先方にも失礼だからな」
「でもきーちゃんいいなぁ、私もテツ君の膝枕で眠りたい」
「ボクなんかの膝でよければ、いつでもお貸ししますよ」
「本当?やった!」
「しっかし、おめーでも黄瀬で分からない事があるんだな」
「はい?」
とうとう元「七鈴家」に泊まりに行く日。
どうしても皆と行きたいと言い、モデル業での4日分のスケジュールをまさかの2日半でこなし集合時間通りにやってきた黄瀬は、車に乗り込むなり黒子の膝に頭を乗せて泥のように眠ってしまった。
集合場所まで黄瀬を送ってきた、いつもなら「休みたい?あなた自分の状況分かってるの?今が一番大事な時なのよ、練習ないならシャキシャキ働く!」と容赦ないマネージャーが。
「この子、この数日本当に寝る間も惜しむ勢いで頑張ったの。まだ未成年だし義務教育中だしもちろん徹夜で仕事なんて厳禁だけど、ぎりぎりのラインまで本当に頑張ったわ。だから、甘えさせてあげて欲しいの。ゆっくり休ませてあげて?」
と、(黒子の手をガシッと握って)懇願したくらいだから、よっぽどだったのだろう。
黒子はそんな黄瀬の、しばらく起きあがらないだろう髪を撫でながら青峰の言葉に反応する。
「何のお話ですか?」
「黄瀬の奢りの理由。結局、俺らに対して負い目があったからって事だろ?お前の話と違うじゃん」
『もしやましい事あるならどこかに不自然があるはずなんですが』
「……悟られたくなかったんだと思います」