黄黒
□[scene19]紫の元仲間
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今まさに試合が始まった時。
「あれぇ?黄瀬ちんじゃーん」
聞き覚えのある声を聞いて、黒子の足が止まった。
「わ、黒子!」
「え?……ぶっ!」
足を止めた黒子の顔面に、黒子にパスを回そうとした降旗からのボールが、黒子の顔面に直撃した。
「ばっか、何やってんだよお前。試合中によそ見すんな」
「黒子っち!」
コートに倒れ込んだ黒子を見てレフェリータイムが入ると共に、呆れる火神の脇を抜けて黄瀬がコートに入り黒子を抱き起こす。
「大丈夫っスか!?」
「悪い黒子!」
「大丈夫です黄瀬君、心配かけてごめんなさい。降旗君も謝らないでください、余所に気を取られたボクが悪いんですから」
「余所って、」
「えー、それってまさか俺の事ー?」
黄瀬の手を借りて立ち上がった黒子の視線を追って、火神達も振り返る。そこにいたのは。
「……お久し振りっス」
「お久し振りです」
「「紫っち(紫原君)」」
見事にかぶった黄瀬と黒子が呼んだ名前に最初に反応を返したのは木吉だったけれど。
「アラー?黄瀬ちん仕事じゃなさそーなのに1人なんて珍しーとか思ってたけど、相変わらず一緒いるんだねー」
紫原はひざを曲げ黒子と同じくらいの目線までになってから、黒子の頭を撫でた。
そうされる事を、黒子が嫌がると分かっていながら。
「やめてください。ボクの許可なくボクの頭を撫でていいのは黄瀬君だけです」
「そうっスよ。黒子っちは可愛いから撫でたくなる気持ちも分かるけど、俺だけの特権なんスから」
「ふーん、つまりは最後に会った時からなーんも変わってないって事だねー」
バシッと手を払いのけられた事は気にしていない紫原の前で、撫で撫でと頭を撫でてくる黄瀬の手はそのままに、黒子は紫原を驚いたように見ている火神を見上げる。
「火神君?どうしましたか」
「いや……お前らんとこと桐皇の試合見た帰りにすれ違ったんだ。……なるほど、こいつが「キセキの世代」センターの紫原か」
どうやら紫原は、東京見学に行きたいと言った氷室を捜してここに来たらしい。
そして聞いた、I.Hに出なかった理由。
「赤ちんが言ったからそうしただけだし」
「……は?赤ちん?」
紫原が出した名前が誰か分からず反復した降旗に、黒子が「赤司君です」と言った。
「「キセキの世代」でキャプテンだった人の事です」