黄黒

□[scene18]誠凛の助っ人
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先に試合会場に入った正邦の試合を見ようとコートに向かうと、それは目を疑う光景。

初戦で、1人の男に惨敗していた。

コートの端には、その彼のものなのだろう陽泉と校名の入ったスポーツバッグがある。

「陽泉……紫っちのチームメイトっスかね」

「そうなりますね」

そんな黄瀬と黒子の会話をよそに、火神は見覚えのあるその顔に驚愕していた。

「氷室……辰也……!!」

「タイガ……!?I never expected to see you here」

それは火神の兄のような存在の男で。

アメリカで彼と出会った時の事から、離ればなれになった後中学生になってからコートを賭けての試合で再会した事、その時の実力は互角だった事。

そして、お互いが49勝49敗になり50勝目のゲームで火神が手を抜いた事、思い出のリングを賭けての勝負を火神の親の都合での帰国で果たせなかった事を聞いた。

「それにしても、火神っち英語出来るんスね。びっくりスわ」

「帰国子女ナメんなよ」

「ああ、君が黄瀬君だね。話は聞いているよ」

にこりと黄瀬に向かって笑顔を見せる氷室は、黒子には気付いていないようで。

「紫原君のチームメイトですよね」

「うん、帰国してきたばかりだからまだ試合とかは出てないけど。えーと……黒子君?本当にいつもそんな風に黄瀬君にくっついてるの?こっちも聞いてた通りだ」

黒子の言葉に、氷室はそこでようやく気付いたようだった。

「タツヤ、こいつらの事知ってるのか?」

火神の問いかけに緩く首を横に振る。

「知ってるというか、話を聞いてただけ。うちにいるからね、彼らの「元チームメイト」が。うまくいけば、もしかしたら紹介出来るかもしれない」

「…………」

無意識的に、黒子はきゅっと黄瀬の服を掴む。
それに気付いて黒子の腰を緩く抱き寄せると、見上げた黒子ににこりと黄瀬が笑いかけた。

その仕草は、いつか笠松達が感じたようにただイチャ付いてるだけのようには見えなくて、それを目撃した木吉や降旗達は目を見張った。






「ストバスの大会にキセキの世代が来ている」という噂は瞬く間に広がった。

そしてそれが黄瀬だと分かると、情報はネットを通じて広がり会場はさながらファッションショーかのごとくの大盛況となったけれど。

大会スタッフが流した、黄瀬本人から事前に得ていた「足の負傷のため試合には出ない」との情報に多少は落ち着きを見せたが。


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