黄黒
□[scene15]ただ、前に。
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黄瀬の青峰のコピーは、第3Q開始早々その片鱗を見せた。
けれどそれは完璧ではなく、イメージとずれているのか青峰相手ではそれをまだ見せる事はなく。
(黄瀬君、)
「大丈夫だ、黒子。黄瀬を信じよう」
森山にぽんぽんと背中を撫でられ、黄瀬から目を離さずにコクンと頷いた。
そして、その時はやってきた。
黄瀬がバスケを始めたのは、青峰のプレイは「絶対に真似出来ない」と認識し憧れを抱いたから。
突然能力を開化させたその時、あまりのすごさに目を見張った。
黒子の力を一番に理解していたはずの青峰。
それなのに、それまでうらやましくも思っていた「相棒」だからこそ出来ていた、黒子と拳を合わせる事もなくなり。
『オレに勝てるのは、オレだけだ』
「じゃあその'オレ'が相手なら、どうなるんスかね?」
表情も、プレイスタイルも青峰そっくりになった黄瀬は容易く青峰を抜き、それを止めようとした青峰からバスケットカウントを取って得点を重ねた。
正に、エース対エースの戦い。
それでもなお、青峰の力は強くて。
第4Q、終盤。
意を付いたはずのシュート姿勢からのパスは、目線のフェイクを見破られた事で追加点を許し。
それでも、最後まで諦めなかった黄瀬に競り勝つ形で青峰が更に得点し、試合は終わった。
「試合…終了ー!」
監督の武内は腕を組んで目を閉じ、海常の皆は悔しさを滲ませる。
それはもちろん、黒子も。
「両チーム、整列!」
審判からの号令がかかり、桐皇の選手は嬉しさを滲ませながら、そして笠松や森山達は悔しさを滲ませながら歩いていく中。
コートに倒れ込んでいた黄瀬は足に力が入らず、自力で立てずに。
(んだよ、クソッ……情けねー)
がつんとコートに叩きつけた拳からは血が滲んでいて、黄瀬自身どれだけ悔しいか皆が思い知った。
そんな黄瀬を見下ろしていた青峰の脇を抜けて、黄瀬に手を差し伸べたのは笠松。
「立てるか?もう少しだけ頑張れ」
「先輩……俺……」
「お前はよくやったよ」
肩を貸し、集合場所まで歩く中その頭を撫でて。
「借りは冬、返せ」
汗と涙で濡れる顔は見ずに。
「ありがとうございました」
礼を終え、ベンチへと戻る。
そこで待っていたのは、優しい瞳をした黒子だった。