黄黒

□[scene1]練習試合前の挨拶
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4月のある日、誠凛高校体育館。

海常高校と練習試合をすると、リコから説明を受けている間に騒がしくなった周りに目を向けると、女子ばかりのギャラリーが増えていて。

その中央にいた金髪の男を見て、皆ぎょっとした。

(何でこんなところに)

(黄瀬 涼太!!)

黄瀬は集まってきていたファンの子達の相手を一通りすると、座っていたステージから身軽に飛び降りた。

「いやあ、次の試合相手誠凛って聞いて、ちょっと興味もあったし挨拶がてら見に来たんス。……ん?」

黄瀬は一通り部員を見渡すと、火神でぴたりと視線を止めた。

「何だよ、」

「くーろこっち、どうしたんスか。その人、気に入っちゃった?」

「へ?」

視線は確実に火神に向いている。
けれど、そこに出てきた人の名前らしきものにも心当たりがなければ、問われた内容も理解出来ない。

「何言ってんだお前」

「あーやっぱ認識されてなかったっスね。黒子っち、戻っておいで」

ぎゅーしてあげる、と黄瀬が手を広げると。

「はい」

短い返事が聞こえて、そこでようやく火神の視界の端に水色の髪が見えた。

「う、わぁあぁぁええあ!?」

「え!?何、どうし……うわあっ!」

「あ!?何だこいつ、いつの間にそこに!」

徐々に皆も気付いて驚きの声を上げる。
これは日常茶飯事な反応なのか、黄瀬はおかしそうにくっくっと笑っているだけだ。

「え、ちょっ、君いつからそこにいたの?」

「最初からいましたけど」

「最初って?」

「「海常高校と練習試合!?」からです」

「本当に最初からじゃないの!」

「だからそう言ってます」

混乱したままのリコの質問に、「黒子っち」は淡々と答える。

「初めまして。海常バスケ部1年の黒子 テツヤです」

「あ、どうもご丁寧に。誠凛バスケ部カントクの相田 リコです」

ぺこりと黒子が頭を下げて挨拶をしたから、リコもつられて頭を下げる。

(バスケ部?にしては)

いつもの観察眼で視てみたが、服装の上からでもはっきり分かる、その能力値の低さ。

黒子はと言えば、観察されるのは好きではないのかとっくに黄瀬の元に戻っていた。

「あれ、ぎゅーしないの?」

「初めましての皆さんいるんで、後でです」


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