黄黒
□[12]君は天使だった
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誠凛から練習試合を申し込まれたと知り、挨拶がてら顔を出した時。
「チームメイト君の事故が原因で一度バスケやめたって聞いたんスけど、相当仲良しなんスね、その子と」
「……お前には関係ねえよ」
「え、あれ?俺言っちゃいけない事言ったっスか?」
火神の顔が曇った理由も、複雑そうに視線をさまよわせていた他のメンバーの表情の理由も、その時は分からなかった。
その「チームメイト」が黒子だと、青峰に聞かされるまで気付かなかった自分が無性に悔しくてしょうがない。
君は天使だった
―最終話―
「まあ黄瀬君、もう動いて大丈夫なの?」
意識を取り戻した翌日、黒子の病室に行った。
医師側は最低3日は自力で歩けないと踏んで車椅子を用意していたようで、歩いて病室から出ると「回復力半端なく早いね、君」とえらく感心された。
(当たり前っスよ、早く黒子っちに会いたいんスから)
「全然大丈夫っスよ。本音を言えば今日にでも退院してバスケの練習したいっス」
「あらまあ、元気だ事」
「黒子っちとバスケするの、俺楽しみにしてんスよ」
黒子の母親にまだ無理しちゃだめよと勧められるまま椅子に座り、4日ぶりに黒子の髪を撫でる。
「ごめんなさいね、同じ院内なのにお見舞いも行けなくて」
「とんでもないっス。……3日前の事、火神っちに聞きました」
「そう。……黄瀬君には、感謝してもしきれないわ。あなたが会いに来てくれるようになってから、テツヤ何とか起きようって頑張ってる気がするの」
「そんな、俺の方こそ、黒子っちにはいつも元気もらってるっス」
「ふふ、ありがとう。来たばかりで悪いけど黄瀬君、テツヤお願い出来るかしら。ちょっと電話をしてきたいの」
「もちろんス。任せてください」
笑顔で答えると黒子の母親も頼もしいわねと笑って、部屋を出ていった。
それを見送ってから、黒子に視線を戻し微笑んで水色の髪をそっと撫でた。
「黒子っち、俺思うんス。俺があの日黒子っちに会えたのは、あの時の俺の気持ちが黒子っちとリンクしたからじゃないかって」
シュート練習をしていた黒子。
もう少し練習がしたいと思っていた黄瀬。
「バスケがしたい」「もっともっとうまくなりたい」、そんな思いが重なり合ったのだとしたら。
「俺ら、相当のバスケ馬鹿っスね」
頬をふわりと撫で、黒子の髪にキスをした。