黄黒
□感情一つで
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はあ……はあ……
「水、急げ!ポカリ誰かもう1本……いや2本買ってこい!」
はあ……はあ……
「もっとタオルも!」
はあ……はあ……
「黄瀬!黄瀬、聞こえてるか?ユニ脱げ、少しでもクールダウンしろ」
はあ……はあ……
WCのvs福田総合戦後。
海常控え室はいつになく慌ただしかった。
過剰練習に加え、試合で初めて「完全無欠の模倣」を使った黄瀬。
その反動は大きく、感情のコントロールが効かずになかなか興奮状態から抜け出せずにいた。
汗が、止まることなく流れ続けている。
「とりあえず水分取れ。自分で飲めるか?」
ポカリのボトルを持たせて聞くと、こくんと小さく縦に揺れた頭に、それでも自分達の声は聞こえているんだと笠松は少なからず安心する。
ユニフォームを脱がせ頭から濡れたタオルをかぶせると、笠松は黄瀬の携帯を見ていい案を思いついた。
「黄瀬、携帯借りるぞ」
「笠松?」
黄瀬の背中を撫でながら顔を上げた森山に、ちょっとなと言って控え室の外に出る。
発信履歴を見ると、やはりというか思った通り一番上は「黒子っち」の文字。
笠松は迷う事なくその番号に発信した。
同じ頃。
「さ、皆帰るわよ!今日はゆっくり休んでね、無理は禁物よ」
「帰る?練習はしないのか」
リコのはつらつとした声に、今から学校に戻って練習するものだと思っていた皆が顔を上げ、日向が不思議そうに聞く。
「馬鹿ね、試合を1つ観戦してクールダウン出来たとしても、キセキの世代とやり合った後よ。今日はゆっくり休んで、次の対戦に控えましょ」
そう。次はとうとう、海常との準決勝。
いつも黒子にじゃれついてる(犬みたいな)姿を見慣れているとは言え、黄瀬もキセキの世代の1人。
コートに立てば雰囲気が一変する事も知っている。
それでなくても、あんなものを見せられたばかりなのだ。
一瞬の油断も出来ない相手。
「じゃあもうここで解散すっか。皆お疲れ!」
さーて帰るぞと歩き出した皆の後に付いていきながら、黒子はマナーにしていた携帯が震えているのに気付いた。
「あ」
「あ?」
声を上げてぴたりと立ち止まった黒子に、隣を歩いていた火神もつられて立ち止まる。