暗闇の中から
□[10]金色の悪魔
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『力を貸してくれ』
見知らぬ男達に電話を切られた直後、宮地が真っ先に連絡を取ったのは黄瀬だった。
宮地はひどく落ち着いているようだったけれどそれは表面上だけで、声音は怒気に満ちあふれていておそらく黄瀬でなければ、たとえば笠松や緑間や高尾だったなら、圧倒されて応対どころではなくなっていただろう。
「話は分かったっス。任せてください」
黄瀬の声もまた怒りに満ちていて、宮地との電話を切ると大きく息を吐いてある番号に電話をかけた。
『もしっ……もしもし!すんません、お待たせしました!』
ほんの数コールしか鳴らなかったのに、電話の相手は慌ただしく謝りながら出た。
『ちょっとすんません……おら黙れてめえら、黄瀬さんの声が聞こえねえだろうが!』
電話の男の声に、騒がしかった電話の向こうが『黄瀬さん!?うわ、すんません黙ります!』との言葉を最後にぴたりと話し声がやんだ。
「あのさ、いつも言うけどもう俺相手にそんな畏まらなくていいぞ?」
黄瀬が「っス」と語尾に付けるようになったのは、黒子と話すようになってからだ。
昔の仲間であるこの彼ら相手だと、どうしても昔の癖が出てしまう。
『いえっ、お世話になった身でありながら、そんな不実は出来ません!』
「不実って大げさな。……で、本題入っていいか、頼みたい事があるんだ」
『黄瀬さんの頼みなら何を差し置いても優先します!』
引退してしばらく経つのに、彼らは今も黄瀬を慕い、もう昔には戻らないと知ってもなおそんな事関係ないですと言って声をかければ嬉々として聞いてくれる。
「探し出して欲しい人がいる」
彼らは二つ返事で了解して、すぐに動いてくれるようだった。
電話を切ると、黄瀬はまた別の人物の番号を表示させる。
「…………」
少し考えてからコール音を鳴らすと、ややあってけだるげな男の声が聞こえた。
『……何だよ』
「う……」
頭がぼんやりする。
視界がかすんでいる。
無理矢理こじ開けた視界の先に広がったのは、知らない場所。知らないたくさんの男達。
「あ、やっと目ぇ覚めましたかー?黒子 テツヤ君」
「……っ、だ、れ……」
「おーい。お前やっぱ薬の量間違えたんじゃね?黒子君まだこの状況よく分かってねえみたいだけど」
「かもな。まさか1時間も起きないなんてよ」